北向きに傾斜した土地は病人をつくる

 日本大学教授であられた清水先生から住まいの話を伺ったことがあります。先生は、生前建築家として各種の建物を手掛けられたが、その中でも住宅に関しては特に造詣が深く、作品ばかりでなく、住宅に関する著書も何冊かお書きになっておられました。
 内容も大変おもしろく、わかりやすくお書きになり、建築には関係のない素人の人々にも数多く読者がいたときいています。その中の一節に先生が若いころ住んでおられた住宅の話が載せられていました。
 内容は、先生が貸家住まいをされていたときの話で、若いころ北向きに傾斜した土地に建てられた建物に住んだことがある。都合によって、その家を引っ越すことになり、荷物をまとめていると、隣のおかみさんが窓から首を出し、話しかけてきました。やはりお引っ越しですかということです。そこで教えていただいたそうですが、その家は先生がお借りになる前の借家人も、その前の借家人も御主人が病気になったということです。そのうちの御一人はその家でお亡くなりになったということです。先生は、どうして入居する前に教えてくれなかったのだろうかということをいっておられました。
 先生の文章は、なかなかユーモアがありおもしろい文章でしたが、その後先生に講義の合間を見てそのことを直接おたずねして見たら、偶然かも知れないねといって笑っておられました。しかし、この話は、なかなかおもしろくためになる話です。

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 昔から北向きに傾斜した土地に家を建てることは凶とされ、忌みきらわれていました。これは日当たりの悪くなることももちろんですが、どうしても北向きに傾斜した土地は地面が乾燥しないことからいわれていることです。
 近年、日照権の問題がさわがれ出して、あちこちで住民運動にまで発展するのを数多く見うけられますが、北向きに傾斜した土地では文句のつけようがありません。土地に日が当たらないということは、単に建物が日陰になるということだけでなく、土地が乾燥しなくて、いつもじめじめしていることに問題があります。
 もちろん、日当たりも健康の問題から考えれば無視できない大きな条件の一つですが、これは公園に行ってでも、あるいは、他の場所へ行っても身体を日に当てることはできる。しかし、土地そのものが日当たりの悪いのはどうしようもない。その中でも特に土地が湿っていたらなおさらのことです。床下が湿っていれば畳も湿ってくる。湿った畳の上にふとんを敷いて寝ていれば、こんどはふとんが湿ってきます。湿ったふとんの中で人間が寝ていれば、寝ている間に人間の身体から出てくる汗も十分に吸いとられなくなります。さらに湿ったふとんは人間の身体の熱をうばい取る。人間の身体から出る汗が十分吸いとられなかったり、身体から熱をうばい去られたりした状態で、長い間生活していれば、病気にならない方がおかしいくらいです。
 清水先生の話が、事実であったかどうか知りませんが、北側に傾斜した土地は、やはり病気のもとをつくることにはかわりありません。土地を選ぶならやはり南に傾斜した土地が一番よいのですが、もしなければ次に東側がよい。それでもなければ西に傾斜した土地でもやむを得ないが、北向きの傾斜地だけはやめたいものです。

住まい暮らし生活
地盤の悪い土地は高くつく/ 北向きに傾斜した土地は病人をつくる/ T字型道路の突き当たりの敷地/ 歩道橋の近くの敷地は危険/ 川や崖地の近くの敷地は危険/ 冬でも日当りを良くするための敷地の広さ/ 敷地を買う前に専門家に相談しましょう/ 部屋面積の二倍が建物の延べ床面積になる/ 家の広さはどれだけあればよいか/ 寝室は専用の方が安眠できる/ 収納スペースはできるだけ多く/ 主婦の労働を軽減するダイニングキッチン/ 狭い住宅に応接間は不要/ 老人の住まいは洋式に/ 基礎がしっかりしていないと床が浮く/ 床の換気は十分に/ 家庭用マンホールが壊れているものが多い/ 基礎と土台はよく繋いでおかないと危険/ 軒や庇の出が少ない建物は早くいたむ/ 地中に入る鉄筋は土に接すると早く腐食する/ 建物の寿命/ コンクリートの軒や庇は落ちやすい/ 陸屋根の雨漏りは簡単に修理できない/ 建物内に作った雨樋は建物を痛める/ 鎹は根元までしっかり打たないと役にたたない/ 一方向にしか向いていない筋かいは役に立たない/ 丈夫な方づえは家を壊す/ 金物を使わない建物は地震に弱い/ 鉄骨は正しい溶接をしていないと危険/ 通路に面して屋根の屋根の流れをつける場合は雪止めを付けないと危険/ 上の階にピアノなどの重い物を載せるのは危険/ 野縁の材料が悪いと天井が落ちるので危険/ 手すりの幅は子どもの頭より細くしないと危険/ 窓の格子は付けないににこしたことはない/ 輸入材は性質を調べて使わないと建物の痛みが早い/ 建具の手抜きは子どもがケガをする/ 畳は便所の床より汚れている/ 結露は仕上材で防げる/ 白い天井は子どもの知育を遅らせる/ 子供部屋には化粧壁を使わない方がよい/ 色壁は人間の感情を左右する/ 壁の色を選ぶときは薄目の色を選ぶ/ 室内の換気口はプロパンガスでは下に、都市ガスでは上に/ フードの正しい付け方/ 手抜き排気筒は事故のもと/ 風呂場での心臓麻痺はなぜ多い/ 蛍光灯は二本一緒につけないと目が疲れる/ 暗い部屋でテレビを見ると目が疲れるのはなぜ/ 配管ミスは病気を招く/ 排水が凍る場合はトラップの水も抜く/ 和風便器は痔や卒中の原因となる/ 陸屋根は天井高を高くしないと夏暑い/ 流しの隣りにコンロ台を置くのは危険/ 屋根の断熱材はどこに/ 騒音は住宅内でも防げるか/ 地震の時は間仕切り壁に近づかない/ 地震のときの逃げ場と危険な家具の配置/ 鉄筋コンクリートの建物は地震に強いか/ 台風や地震のときはガラス窓は危険/ 台風の多いところでは、屋根の形や構造に気をつける/

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