狭い住宅に応接間は不要

 住宅の歴史から客間を見ると、客間が現れてきたのは、中世になってからです。それ以前の、最も古い住宅の形態は夜の生活だけで建物の内部は一室だけでこれを室戸と称していました。現代でもワンルームシステム(一室だけ)などという住居形態がありますが、これとは意味が違う。昔の一室は、主として寝室プラス重要品の保管場所として用いられており、炊事をしたり食べたり休息したりする室はなかった。そのためおのずから室は四方が壁で仕切られ、室の中に明かりは入らないようになっていました。それでは困るということで、夜の生活をする場所に昼の生活をする部分が付けたされた。付けたされた室は今日のようにガラス窓等というような便利なものがなかったので、吹き放しで屋根だけのある空間です。
 この段階でようやく二部屋になりました。ここでも炊事だけはやはり外でやっていました。中世に入ってくると、生活に多少ゆとりが出来て来たと見えて、人間の往来が始まってきました。そのため接客空間の必要性が出てきました。雨の降った時など外で立ち話もできないので、最初のうちは屋根に庇(ひさし)をつけここを利用していたらしい。しかし、中世の後半になると身分制度が確立し、主人より身分の高い人がたずねて来たときに庇でというわけに行かなくなってきました。そこで自分より身分の高い人がたずねて来たときにあまり失礼もできないということで、家の中で最も良い場所を接客空間として取ることになりました。これが現代の客間の生いたちです。そして、このころから障子やふすまが完成され、室の分割が行われるようになってきましたが、客間はこれによってますます高級化してきたのです。
 今日でも住宅を建てる場合には客間を中心に考える人が数多くいる。客間はそんなにいい場所にとる必要ない。身分制度も別に問題ないし、年に一度か二度来る来客のための立派な客間などというものは不必要であろう。むしろ、汚れていてもよいから、大切な来客には家の中の雑然としたところを見せて、心から歓待してさし上げた方がいいのではなかろうか。私の家でも仕事がら書斎兼客間を持っていますが、大切な来客には、むしろ私どもの茶の間に来ていただいています。子供が小さいため、障子もなく、ふすまも骨までなくなって大変な住まいであるが、やはり喜ばれます。客は私だけの客でなく、やはり家族全員で迎えたいものです。

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 日本の住宅には床の間は付きものです。一個建ての住宅はもちろん、最近のマンションでも床の間のない住宅というのはまだ数少ない。
かつて東京で住宅公団が住宅を建て始めたばかりのころ、我々がその住み心地について意識調査をしたことがあります。その結果によると、公団住宅というものは何となく住み難いという結論が出ました。
 もちろんそれまで鉄筋の住宅に入ったことのない人であるから、そのような結果になることは予測されていたのです。その理由を調べて見ると、どうも床の間がないからだということになりました。ほとんどの人たちの意見として、やはり畳の室に一部屋ぐらい小さくてよいから床の間がほしいということでした。どうしても床の間がないと室の中心がないみたいで落ち付かないといいます。
 その後この話を耳にしたのか材料メーカーが、付け床の間というのを発明しました。付け床の間というのは団地用として売り出されたもので単に壁に取り付けて置くだけで良いものです。結構売れているということです。この床の間というのは、鎌倉時代以後に中国から掛け軸や工芸品が輸入されて来て、それを飾るのが流行しました。この掛け軸や工芸品を飾るのに、当初幅三十四ほどの厚い板を部屋の正面の壁面に置いて利用しました。これを押し板と称していましたが、室町時代になると壁を六十四ほど奥に引っ込めて使うようになりました。その後この板の部分を一段高くするようになり、さらに床の間の柱には特にいい材料を使うようになってきました。これが床柱です。
 現在の床の間はこれとほぼ同じであるが木割り(柱間の寸法)の都合で、九十四にしています。本来、床の間は三十四程度の奥行きで、掛け軸や工芸品を置いたものが、狭い住宅で九十四も床の間にとるから、現在では、この床の間にミシンやタンスの一つも置いたほうがよいということで、せっかくの床の間が使われていない例もかなりあります。
 どうせ使われないならば、もっと有効に床の間の面積を利用した方がよいということで住宅公団では、床の間を付けないで他の部分の面積を広くしたのであろうが、建物の利用者は勝手なもので、床の間がないから困るということになります。住宅公団のように、一率に同じ住宅をつくって全部の人々に気に入られるのは大変難しいことです。いっそのこと、間仕切りもなにもしないで、自分で自由に仕切れるようにして賃貸しした方がよいのではないでしょうか。

住まい暮らし生活
地盤の悪い土地は高くつく/ 北向きに傾斜した土地は病人をつくる/ T字型道路の突き当たりの敷地/ 歩道橋の近くの敷地は危険/ 川や崖地の近くの敷地は危険/ 冬でも日当りを良くするための敷地の広さ/ 敷地を買う前に専門家に相談しましょう/ 部屋面積の二倍が建物の延べ床面積になる/ 家の広さはどれだけあればよいか/ 寝室は専用の方が安眠できる/ 収納スペースはできるだけ多く/ 主婦の労働を軽減するダイニングキッチン/ 狭い住宅に応接間は不要/ 老人の住まいは洋式に/ 基礎がしっかりしていないと床が浮く/ 床の換気は十分に/ 家庭用マンホールが壊れているものが多い/ 基礎と土台はよく繋いでおかないと危険/ 軒や庇の出が少ない建物は早くいたむ/ 地中に入る鉄筋は土に接すると早く腐食する/ 建物の寿命/ コンクリートの軒や庇は落ちやすい/ 陸屋根の雨漏りは簡単に修理できない/ 建物内に作った雨樋は建物を痛める/ 鎹は根元までしっかり打たないと役にたたない/ 一方向にしか向いていない筋かいは役に立たない/ 丈夫な方づえは家を壊す/ 金物を使わない建物は地震に弱い/ 鉄骨は正しい溶接をしていないと危険/ 通路に面して屋根の屋根の流れをつける場合は雪止めを付けないと危険/ 上の階にピアノなどの重い物を載せるのは危険/ 野縁の材料が悪いと天井が落ちるので危険/ 手すりの幅は子どもの頭より細くしないと危険/ 窓の格子は付けないににこしたことはない/ 輸入材は性質を調べて使わないと建物の痛みが早い/ 建具の手抜きは子どもがケガをする/ 畳は便所の床より汚れている/ 結露は仕上材で防げる/ 白い天井は子どもの知育を遅らせる/ 子供部屋には化粧壁を使わない方がよい/ 色壁は人間の感情を左右する/ 壁の色を選ぶときは薄目の色を選ぶ/ 室内の換気口はプロパンガスでは下に、都市ガスでは上に/ フードの正しい付け方/ 手抜き排気筒は事故のもと/ 風呂場での心臓麻痺はなぜ多い/ 蛍光灯は二本一緒につけないと目が疲れる/ 暗い部屋でテレビを見ると目が疲れるのはなぜ/ 配管ミスは病気を招く/ 排水が凍る場合はトラップの水も抜く/ 和風便器は痔や卒中の原因となる/ 陸屋根は天井高を高くしないと夏暑い/ 流しの隣りにコンロ台を置くのは危険/ 屋根の断熱材はどこに/ 騒音は住宅内でも防げるか/ 地震の時は間仕切り壁に近づかない/ 地震のときの逃げ場と危険な家具の配置/ 鉄筋コンクリートの建物は地震に強いか/ 台風や地震のときはガラス窓は危険/ 台風の多いところでは、屋根の形や構造に気をつける/

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