窓の格子は付けないににこしたことはない

 今でも奈良の町を歩くと道路に面した住宅で、格子のついている住宅にぶつかることが多い。この格子のある住宅というのはなかなか日本的で乙なものです。しかし、この奈良の住宅というものは何も好き好んで格子をつけたのではない。風流と解するのは他所もんで、奈良の人々は自分の生命を守るために、真剣にあの木の大きさや幅を考えて格子を取り付けたものです。泥棒や強盗から人の生命を守るためならば表側だけでなく裏も考えておかなければなりません。しかし、奈良の住宅を見ると裏は別に格子を設けていない。まったく、頭かくして尻かくさずの類です。

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 これは、泥棒や強盗よけではない。昔江戸時代に動物を殺してはいけないと御触れが出された。しかし、奈良には鹿が多い。この鹿がどうしても町の中に入って来ていたずらをして困る。追い払えば御触れに逆らったことになり打ち首になるし、放っておくと家の中まで入って来ていたずらをする。あの大きな鹿が家の中まで入って来て荒らされたのでは、赤ん坊など踏み殺されてしまうおそれもある。しかたなく民衆は、鹿が来れば御鹿様が来たということで家の中に閉じ龍ることになります。しかし、昼間から雨戸を閉めれば家の中が暗くなるし、障子やふすまでは鹿に壊されてしまう。そこで考えついたのがあの格子です。現代では鹿のために格子を付ける必要はないが、こんどは泥棒や強盗から財産や生命を守るために格子が必要になってきた。一階だけならともかく、泥棒や強盗は鹿より始末が悪く、二階でも三階からでも入り込んで来る。そのため、各家では二階にも三階にも格子女つける例が多い。しかし、この格子というのはたしかに財産を守るのにはある程度役に立つものなのかもしれないが、人の生命を奪うことにもなりかねない。火災で窓に格子が入っていたために逃げ場を失って焼け死んだ例は毎年あとを断たない。焼け死んだあとでいつもあの格子さえなかったら助けられたのに、といつも悔まれる言葉の一つです。泥棒や強盗はおとなしくしていれば生命までとるものはいないであろう。少しぐらいの財産を持って行かれても生命に替えることはできない。もし、デザインのために必要なら強く押せばこわれるような格子にしておくのがよい。この場合服下まで取れるようだと下に落ちてしまうおそれがあるので、服上だけ取れた方がよい。
 以前も青森の精神病院が火事になり、この格子があったために大量の死傷者を出したが、やはり格子というものはつけないにこしたことはない。

住まい暮らし生活
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