地震の時は間仕切り壁に近づかない

 建築の材料に貫(ぬき)というものがあります。貫は、柱や、束(つか)などが横に振れたり、倒れたりするのを防ぐために用いられるものです。柱と柱の間、いわゆる壁面にある貫は、壁面の固定に役立つ。木造建築では出来上がってからは目に触れることのない大切な一部です。この貫というのは貫(つらぬ)く、いわゆる物をつきとおすという言葉から出てきています。そのため昔は、この貫を使う場合には柱なり束に貫穴という貫を通す穴を掘って、一木々々丁寧に通していったものです。最近ではこの貫穴を掘って貫を通さずに、柱と柱の間だけに柄(ほぞ)穴を少し掘り、納めてしまうことが多い。これでもしっかりと入っていて移動しないようになっていれば十分なのであるが、うっかりすると押せばはずれるようになっており、かんたんな釘打ち程度でごまかしているものも多い。さらにうっかりすると、貫もつけないで工事をしてしまうところもあります。どうも壁がぐらついて困るなどの苦情はこの貫がしっかりしていないためです。

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 木造の住宅程度の壁であると、この壁が倒れても子供でもないかぎり、押し潰されて大怪我をするということはあまりないでしょうが、これがブロック造りや、鉄筋コンクリート造りになると大変です。ブロックの壁が倒れて人が死んだという例はいくつもあります。これはなにも地震にかぎったことではありません。地盤沈下により自然に倒れることもあるし、風圧によることもあります。しかし、やはりなんといっても地震による被害が最も大きい。
 地震となると、ブロックの間仕切りはもちろん、鉄筋コンクリートの壁でも倒れてくることがあります。これは、柱と壁の繋(つなぎ)部分がしっかりしていないために起こるものです。単なる間仕切り壁だからといって、簡単に止める程度にしておくと、人命にかかわることになります。当初の貫のはたす役割を十分考え初心に帰って設計しておく必要があります。
 地震になったら、まず机かベッドの下に隠れろとよくいわれます。どうもこのことを私はあまり信用しません。おそらく、机の下に隠れろという理由は、天井から物が落下して怪我をするのを防ぐためでしょう。しかし、天井を見回して見ると天井から落下しそうなものは照明器具ぐらいです。この照明器具が落下するような地震となると相当大きな地震です。
 このように大きな規模の地震では、第一机やベッドなどどこかにすっ飛んでしまいます。これらが床に固定されていたとしても大地震の場合にはそれが安全であるという保証はありません。机の下に隠れているつもりが気がついたら頭の上に机がなかったということになりかねません。うっかり机にしがみついていると、建物が潰れて、机もろともあの世に行ってしまうことにもなります。
 昭和四十三年に起きた十勝沖地震程度でも、天井からつり下がっている蛍光灯よりも窓下に置かれていた暖房用のラジエーター(放熱器)の方が恐ろしかったと被害者は一様に証言しています。ラジエーターというものは、ほとんどが床と壁に固定されています。床での固定は単にそこに置いておくだけでなく、もちろんパイプを通して固定しているし壁面にも補助固定がなされているのです。十勝沖地震ではこのラジエーターの接合部が切れ、部屋の真ん中辺まではね飛ばされて来たということです。このラジエーターは一人で簡単に持ち運べるような代物ではありません。そのラジエーターが飛ばされるのであるから、いわんや移動式の机やベッドなどというものはひとたまりもなく飛ばされてしまいます。
 最近は照明器具も見た目が悪いからという理由で埋め込み式(天井に照明器具を埋め込んでしまう方法)が多くなりましたが、それであればなお安全である。つり式の蛍光灯でさえもこのラジエーターに比べたら被害は少なかったのです。
 地震になったらやはり外に逃げるのが一番です。ただし、逃げるときは上から何が落ちてくるかわからないので、なるべく大きな座布団か毛布、なければ板端でも頭の上に載せて逃げるのがよい。中居の建物であればなにも一階でなくてもよい。屋上に逃げてもよい。これまでの地震の災害のデータによると、一階や二階の被害に比べ屋上の被害はほとんどありません。

住まい暮らし生活
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