有名な建築家に家の設計を頼むのは得か損か

 建築家という人種はどうも我の強い者が多いらしい。一度言いだしたらてこでも引かぬといわれています。ところがこれは家の設計を依頼する側としては誠に困った問題の一つらしい。特に相手があまり本当の陶建築知識をもっていないとなおのことです。これでは危険だから別の方法にして下さいといっても、決して直してくれないという。工事費がいくらかかろうが、そんなことは無関心です。これだけの予算しかありませんが、これで出来る範囲のものを設計して下さいと頼んでも、引き受けた後は、どうも予算がオーバーしてしまいそうですといわれる。一割程度の予算のオーバーはやむを得ないとしても、倍にもなることがあります。物価の値上がりとか特別な事情のある場合はは別としてもです。

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 このオリンピック工事なども予算がオーバーしたそのよい例です。別に国の予算が少なすぎたわけではない。それでも当初予算の倍もかかったものがあります。あのときは追加予算が組まれどうにか切り技けたが民間企業だったらどうしたのだろうか。個人住宅などであれば、なけなしの金をはたいて家を造るのでそんなことをしたらたちまち破産です。有名建築家が一つ作品を造れば、雑誌や新聞が書きたててくれるから、それが建物を使う側にとって良かろうと悪かろうと別に関係がない。出来上がったら単に形がユニークだというだけで、報道機関はとびつくのであろう。そのために、またそれを知らない人々がぜひあの建築家に設計をと飛びついて行くのです。私も学生時代は建築家になることを夢見てあこがれました。
 しかし、その後ある有名な建築家の作った住宅作品を見て幻滅を感じたことがあります。どこをたずねても使っている人で良くいう人が一人もいない。いやそれどころか、最初に設計してもらった人が住んでいる建物は半分もなかったのです。ほとんどの人はとても私どもには住みつくことができませんといって逃げ出してしまっているのです。
 作家は新しいタイプを生み出して行かないとニュースにならない。全財産をはたいて自分の満足のゆく家が持てないのは誠にお気の毒な話である。あまり有名な作家に住宅等たのまないことが無難です。
 最近の住宅はコンピュータが設計してくれるという。このことはもうすでに一部アメリカで実施されているので別におどろかないが、アメリカでもまだせいぜい工場建築等ぐらいです。
 そのコンピュータの国、アメリカを追い抜いていよいよ日本でもコンピュータが住宅を設計するようになったのかと一時びっくりしたものです。しかし、よく考えて見ると、私の知っている研究者の中にはそんなことまでやったことは聞いていない。
 このようにすばらしいことをやってのけた人は誰だろうと思って、たずねて見たら何のことはない。住宅の設計図面をあらかじめ何種類も作っておいて、その人の家族とか、収入とか、土地の条件とかを記入させ、それをコンピュータに入れてやると貴方の家はこれが適当ですと前に作ってあった図面を選んで取り出すしくみだという。
 コンピュータうらないのようなものです。下手な設計屋さんにたのむよりは安心かも知れないがやはり住宅は自分で考えるにこしたことはない。住宅を造るのは、一生に一度のことである。普通のサラリーマンで一生に二度も三度も家を建てる人はあまりいまい。
 この一生に一度の大仕事をコンピュータにやらせるなどもってのほかです。コンピュータで自分の思ったものがあれば別である。それ全部がコンピュータに入っているならともかく、せいぜいコンピュータに入っている図面は何百種類の単位であろう。自分で考えるたのしみもなくなってしまいます。
 やはり自分で考え、自分で図面を引いて見るのが一番です。もちろん素人の人が玄人の人より図面が上手に引けるようだったら、玄人は必要なくなってしまいます。まずくてよい。きたなくてよい。何度も何度も自分で考えていじくり回して見ることです。自分でわからないところは玄人に聞けばよい。玄人は丁寧に教えてくれるでしょう。教えてくれない玄人には仕事をたのまなければよいのです。ある程度基本がまとまってから設計事務所に図面をお願いするのが一番よい。何もしないでいきなり図面を頼むと、いいかげんにされるおそれがある。自分で勉強して自分で一応図面を引いて、それから信頼のおける事務所に頼むのがよい。設計料とは決して値切るものではない、設計料の一割は、よく高すぎるといわれるが、設計をする方では、一割もらっても住宅だけは損をするからやりたくない、という事務所が多いくらいです。これは丁寧にやってくれるところほどそんなものです。実際、住宅の設計では所員の手間賃にもならないのが実情でしょう。

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