家を建てるときに一番気をつけなければならないこと

 家を建てるとき、一番気をつけなければならないのは何でしょうか、そんな質問をうけたとしたら、私はこんな風に答えるつもりでいます。
 もし、それが中年をこえ、すでに老境に入りかけている人だとしたら、「お体に気をおつけなさい。」もしまた、それが若い新婚早々の人だったなら「先々のことをよく考えてお建てなさい。」
 老境に入りかけている人に向って、何故そんな答えをするかというと、ともかく、家を建てることは、有形無形の、実に多量のエネルギーを必要とするからです。やっと家が出来て、それに住みついて一月か二月で大病をする人がよくいます。それくらいならまだいいが、亡くなってしまう人もいます。昔はその家の家相がわるかったのだ、などといいました。しかし、家相見に隅から隅まで間取りを見てもらって、建てて、死んでしまった人もいます。家相などではない。エネルギーの使いすぎです。
 なぜそんなに家造りは人間を疲れさせるか、それにはいろいろな理由があります。

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 第一に、これは相当の時間を要する仕事だからです。家を建てるには短くて三月、長い丁寧な普請だと小住宅でも半年ぐらいかかります。その間、夫は別の本職の片手間に、妻は家事の傍で、その複雑で多岐な仕事をするのは容易なことでないからです。
 第二に、家造りにとりかかると、それが頭にこびりついて、離れなくなるからです。設計者や大工と打合せてこうときめる、しかし、家へかえってつくづく考えるとそれでは具合がわるい、速達を出して設計変更を申し出る。家造りとは結局そんなことの連続になるだろう。
 それと、これにからんで夫婦の意見のしばしば食い達うことです。家造りについて、奥さんは常にきわめて強い発言者である。旦那さんは、いくら偉そうな顔をしていても、家の中のことをよく知らない。靴下がどの引き出しに入れてあるかさえ知らない男性は、到底女性の強力な発言の敵ではありません。そのことから、しばしば夫婦のいさかいがおこります。
 そのほか、子供がすでに高等学校から大学へゆく年齢に述していると、各自それぞれの意見を主張します。そのため、ある家では毎晩十二時から一時まで家族会議をひらいていました。一番気の毒なのは大工で、会議の結果の設計変更を毎日申し渡される。
 第三に、家造りが仲々予定の金額でおさまらないことです。設計変更が多いほど建築費はかさむ。これが御主人へのきわめて強いストレスとなります。
 第四に、家造りにからんで、大工さんのおやつとか、荷物の整理とか、片附けとか、きわめて細かい大量の仕事があります。これは奥さんの大きな負担となります。
 それやこれやで、やっと家が出来て、引越して、落ちつくと、正直のところがっかりしてしまう。それからどりと寝込んでしまったりします。
 だから、相当の年輩の人が家をつくるときは、些細のことには目をつぶり、よく睡眠をとり、妻といさかわず、春風の中にいるような、のどかな気持でこれに立ちむかうことが大切だと思うのです。

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