家造りは伴侶を選ぶのと同じ

 家を建てるのにまずしなければならないのは設計ですが、いうまでもなくこれは専門的な建築家がうけもつ。しかし、建築家が具体的な設計図をまとめるには、そこに住む人から充分な希望と意見をきくことが必要です。もちろん、その希望や意見がお互いに矛盾していてもかまわない。雲をつかむようなことでもいい。それを材料として消化し、現実に建てうる家の形をまとめてゆくのが建築家の役目です。
 これは患者からその自覚症状をきいて、その処置をきめる医者に似ています。医者というものは患者のいうことを注意深く聞いていますが、だといって、それを全部真に受けているわけではありません。その会話を、一つの正しい判断をひき出すための資料としてきいているだけである。建て主の希望をきく老練な建築家にも、一寸そんなところがあると思います。

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 医者にとって一番始末のわるいのは、薬の処方まで自分できめかねないうるさがたの患者です。それと同じに建築家を困らせるのは、プランの隅から隅まで自分ですっかり決めなければ承知のできないような建て主です。なぜといって、プランというものはそれだけで完了するものでなく、一方で構造もからみ、他の方で家の形とからみ、屋根とからみ、そういう全休とでバランスしつつプランは形づくられなければならないからです。
 このように書くと、建築家というものは万能のようですが、これも医者と同様で、その力には限度があります。家も要するに人間の作品で、不完全であることをまぬがれない。その不完全の皺をどこによせるか、その辺でいろいろの建築家のやり方が分れます。
 とも角、家を建てたい人は自分によく合った建築家を選ぶことが大切で、選び方をあやまると、その家に住んでいる間、愚痴をこぼさなければならない羽目となります。その選び方は一つしかありません。その建築家の建てた家を何軒か自分の眼で隅から隅まで見、そこに住む人に住み心地や、その建築家の性質をよくきいてから、それを決定することです。
 一番いけないのは、雑誌の写真などで一目惚れすること。私の所に友達がとびこんで来て、その家を見てくれいというのである。事情をきくと、雨が漏ってとまらない、という。どんな家だ、とたずねると、「木造で陸屋根だ」という。そんな家、雨の漏る方が当り前じゃないか、と答えると、薄情なことをいわないで何とかしてくれ、と泣きそうな、怒ったような顔をしている。
 その男がつくづくと、家を造るのって、女房をきめるのと同じだね、器量のいいだけじゃ仕様がないや、となげいていたが、恐らくこれも雑誌の写真での一目惚れだったと思う。当時、そんな木造の陸屋根がはやり、それはなかなか見た目にいいもので、その男もふらふらっとそんな家を建ててしまったのでしょう。
 建築家に設計料を払うだけのお金の余裕のないときは、工務店にじかに設計ぐるみ家をたのむが、この場合も、前と同様、その造った家を何軒か自分の限で見、住んでいる人の意見を聞いて選ぶべきです。

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