楽しい食事の雰囲気をつくるには

 居間の一隅で食事をするという場合、えてして食事の場所は虐待されます。あまり外光のとどかない壁に接して卓をおいたり、北側につくったアルコープをその場所としたり、どうも食事というものが生活のつけたしのような感じをうけることがよくあります。場所はどこでもいい、ともかく腹の中へ食事がつめこめればそれでよい、といった戦争直後的な気分がなおこんな所に尾を引いているのではないでしょうか。

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 しかし、食事の際の雰囲気というものは、家庭生活にとって相当大切である。これは下町に住む人からきいた話ですが、その家は隣との間に手首をさしいれるほどの隙さえないくらいに建て混んでおり、窓はあっても窓から一握りの日光すら入って来ない。食事の場所も真暗で、朝昼晩電灯をともして御飯をたべていたが、あまりの暗さに、食卓の卓上にトップライトをとることにしました。さて、それが出来上ると、室は忽ち天の岩戸が開いたような明るさで、家中の誰も彼もが急に沢山御飯をたべはじめました。それは、おひつの御飯の減り方で実にはっきり判ったといいます。
 食物は口から入るものですが、眼をはじめ体中の感覚が食事に参加しているのでしょう。私は一度、味噌汁の椀でビールをのんで見たことがありますが、味はコップでのむのも同様のはずであるのに、何ともまずかった。食事は口腹だけの問題でない。だとすると、食事の場所の選定には頭を充分はたらかせる値打があることになります。
 その場所として一番理想的なのは家の東南隅、つまり一年を通じて朝日をうけ、夏は南風が入り、冬の日のあたたかいこの方向だと思う。しかし、家のプランはそう思うようにゆくものでなく、その他の方向に食卓を据えざるを得ないことも多いが、とも角、気持よく落ちついて御飯をたべられるムードを食卓の近辺につくることは是非ともしたいものです。
 また、食卓を居間の一定の場所におくことをせず、季節によってその位置をかえ、生活の気分をかえてみるのも面白いでしょう。人間の生活感情は四季の移り変りによって随分ちがう。桜の咲く頃と、木の葉の散る頃とでは、どんな人間だって、ぐんとちがう。第一、食卓にのぼるお料理の材料が春と秋とではちがう。だから、春分の日から秋分の日に至る春夏の半年間も、秋分の日から春分の日に至る秋冬の半年間と、食事の場所をかえ、その周囲の雰囲気をかえたりするのは、生活に弾力を与える意味からも一寸面白いと思います。
 次に食卓そのもの。食卓の幅はたっぷりしたもので80cm、きりつめたもので70cm程度です延50平米以下の小住宅では、さらにそれをきりつめ、幅65cm程度の食卓をつくることもあります。もちろん、それでも御飯はたべられるのですが、たとえば誕生日とかクリスマスとかに、テーブルの真中に飾り菓子や花をかざったりする贅沢は、この際見送らなければならないでしょう。
 食卓の長さは一人当り60cmが定寸、だから二人並んで座るためには1.2m、左右に10cmのゆとりをとって1.4mがごく普通の二人並びの食卓の長さです。なお、食卓の高さは72cmを定寸としてよいが、人によってはもっと低く、70cm位のものを用いているものもあります。
 こういう寸法を覚えるとき、気をつけるべきことは、杓子定規にそれをのみこまないことです。たとえば、広さ八畳といった小居間に食卓をおこうとする時、定寸の食卓をつくったら、どうにも幅ったくて大き過ぎて仕末が悪いだろう。そんな場合は、家族四人なら四人のものがぎりぎりどの程度の食卓で御飯をたべられるかを自分で物差しをもって割り出して見ることです。世の中できめられている寸法というものは大切なものですが、それはあくまで平均値であり、頭をひねるとそれをきりつめる隙間が案外残っているものなのである。
 次に食卓の高さで、これは70cmを定寸としています。こういう高さに関する定寸は、プランの大きさと関係がなく、家の広さに従って伸ばしたり切りつめたりする必要が起らないから鵜呑みに覚えていただいて結構です。もちろん、居間のセンターテーブルとしては非常に高すぎる寸法で、それとこれとを共通にすることはまず無理です。
 食卓には、抽斗をつけておくと、一寸したものをいれておくのに便利である。
 食卓の近所には食器戸棚(配膳台を兼用)が必要で、これがないと、食卓の上がトースターやミキサー、塩やソースの容器などで満員になり、時に御飯をたべることができなくなったりします。だから、食器戸棚の設けられないときは、せめて食卓と同高の棚をどこかに設けるべきである。近所の窓を出窓にした、その棚でも結構です。

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