台所はどの方位が一番良いか

 台所をどの方向にもってゆくか、これはプランをつくるとき誰もが頭をいためる事柄です。戦前の住宅では、まず例外なく台所を北側にもっていきました。しかし、戦後それを南側にもってゆく動きがおこり、昭和二十五年から三十年までに出来た家にこの式の家が多かったように思います。
 何故、そんな風に戦前と戦後で台所の位置が変ったか。その根本は、戦後、家庭の主婦が台所で立働くようになったためと思います。戦前は中流家庭に必ず女中がおり、台所は女中の受けもち場所でした。男の子が台所へ行ったりするとよく叱られたのは、邪魔なためもありますが、ここが女中の働く、はしたない場所だったためだと思います。
 戦後、女中が極めて得難くなり、主婦が台所を自分の仕事場とするより仕様がなくなると、人間とは現金なもので、台所をいい方向にもってゆく動きが猛然と起った。ダイニングキッチンやリビングキッチンの流行も、やはりそのことと関係があると思います。

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 しかし、昭和三十年頃から南側の台所に対する批判がおこった。台所を南側にもってゆくのはいいとして、他の是非とも南側にもってゆきたい室を南側から追払ってまで、台所を優遇する必要はない。それより、台所の仕事は手早く片附け、その他の仕事は日当りのいい居間なり何なりへ行ってゆっくりやるべきだ、というのである。また、北側が一年を通じて低温であることが、食物の貯蔵場所としての台所にもってこいだ、というような反省も行われました。
 現在、台所は特にどっちにもってゆくべきだ、という意見はあまりきかれず、その家その家のプランの都合で、一番便利な所にもってゆくのが合理的だ、という常識的な結論に達しています。
 東側の台所、これは一年中、一日のうちでの低温時に必ず日射が室深くまで入って、衛生的である。特に、東北隅に台所をもってゆくのはいいと思っています。昔の家相でこの方向は鬼門にあたり、台所のような濡れる室をここへもって来るのは凶とされたが、現在の常識では大吉です。
 南側の台所、夏涼しく冬暖かく、中で働く人にとっては最もいいが、風通しのことを忘れると、夏案外暑い室になり、たべものが腐ったりするかも知れない。主婦の健康があまりよくないような場合に適当である。
 西側の台所、これは夏べら棒な暑さなのが欠点。どうしてもこっちへ台所をもってゆかねばならぬときは、外壁に保温材をふんぱつしてその熱遮断力をあげ、窓にルーバーをとりつけて日射をふせぐなど、夏の防熱に特別の注意をはらうことが必要です。
 北側の台所、一年を通じて低温で、ものの腐らないのはいいが、建つ場所によっては冬の北西風が強く吹き込み勝ちとなります。北側の台所に勝手口を設ける場合は、その扉をあけても台所に風の吹きこまないように心をくばるべきです。つまり、勝手口の土間を、台所の室外におくべきだと思います。
 北西風を真正面から受けるという意味では、北西の隅の台所が最悪ですが、この方向は、夏の夕方の西日の照りつけ方も一番きびしい。つまり、夏暑く、冬寒く、一番仕末におえぬ方向といえます。現代の家相学をつくるなら、この方向の台所は大凶です。
 それと、も一つ、北側は湿気るという欠点がある。日当りが概して悪く、それが真北だと、秋分から春分までの半年間絶対に日があたらないから、室内の乾きがきわめて悪い。そのため、台所の土台や柱の根はしばしば腐朽菌やシロアリにとりつかれます。

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