働きよい台所を造るには

 流し、調理台、レンジ、ともかくこれだけそろわないと台所は形をなしません。流しは料理の原料を一応ここで洗ったり、苑でこぼしの湯を流したり、鍋や釜に水をくんだり、米をといだり、といった料理に関して水に縁のある仕事をする場所であると共に、食後の食器を洗う場所でもあります。そのため、大きな台所、たとえばレストランの台所では料理用の流しと食器用の流しとがはっきり二分されています。家庭用の台所では普通一つで間に合わせていますが、たまには別に食器流しをおく場合もあります。

スポンサーリンク

 調理台は、そこで肉を切ったり、野菜をきざんだり、といった庖丁仕事を行うため、昔はここを庖丁台といったりしました。非常に昔の台所はこの調理台がなく、まな板を床の上において、庖丁をつかった。まな板に下駄のような二枚の歯(脚)がついていたのは、ただの板では床において低すぎ、庖丁がつかいにくかったためです。
 レンジはいうまでもなく煮炊きのための道具。
 さて、この三つをどうならべるかだが、それに二つの流儀があります。第一に、食物の調理の仕方から考えて、まず洗い(流し)、次に切り(調理台)、最後に煮たり焼いたりする(レンジ)のだから、その流れに素直に、

 流し - 調理台 - レンジ

 と並べるのがいいとする流儀です。
 第二のは、この三つの内で一番ひんぱんにつかわれるのは流しだから、それを真中にもって来て、

 調理台 - 流し - レンジ

 の順序がいいというのです。日本料理の板前などはこの流儀であり、また、公団アパートの台所もこの式ですが、そこに住む奥さん方の間に、これは不便で、第一の流儀にすべきだ、という意見か大分強いという話を聞いたことがあります。
 どっちがいいか、正直のところ、私は男でお料理などつくったことがないため判らないのですが、ともかくこういう二つの対立した考え方のあることだけ紹介しておきます。
 流しと調理台は現在連続しているのが普通で、その仕上げはステンレス張りが最も多い。ステンレスにもいろいろ種類がありますが、18-8NiCrがよいとされています。昔、まだこういういい材料のなかったころ、仕上げといえば白タイル張りときまっていました。しかし、タイルは硬過ぎ、コップを一寸落してもこわれてしまう仕末で、あまり評判がよくなかった。それに、タイルには長年の間にひびが入ったり、はがれたりする欠点もありました。
 そのタイルのまだ普及しない時代には人造石研出し、しかし、これは汚れやすく、不潔になりやすい欠点があった。その頃は、また、ここヘトタン板を張ることもありましたが、これは流される塩類や酸類のために、一年足らずで錆びてつかえなくなるのが普通でした。
 それよりもっと昔はただの檜製、水を年中あつかう流しを木製にするのは無理で、じきに腐り出す。ただ、調理台に檜をつかうことは刃物に対する感触がよく、これは今も料理屋などで板前の板としてつかわれています。ただし、その檜は厚さ6cmから9cmもある美事なものです。
 次に、流し、調理台の高さですが、これは戦前75cmと相場がきまっていました。しかし、近頃80cmが普通で、ガスレンジもこの高さに揃うように出来ています。しかし、この寸法もまだ低すぎるという説が出て、85cm程度のものを使っている人がいます。その方の専門家である料理屋の板前にいわせると、板の高さは臍の高さだそうだが、それは素人には一寸高すぎ、臍より5cm程度低いくらいがいいのではないかと考えます。ともかく、低過ぎる流しは前かがみになるため、腰を疲れさせます。
 流しの奥行は55cm、深さは18cmを定寸とします。調理台の高さは流しの縁の高さにそろえるのが便利です。
 近頃は、流しと調理台の連続したものが既製品として出来ているが、それを買うときは特に流しの排水がどうなっているかをよくしらべることが大切です。排水溝にごみのつまったとき簡単にそれをとりのぞけるか、トラップ(S形をした防臭弁)があるが、そのトラップにごみのつまったとき簡単にとりのぞけるか、などで、また側が木製のときはそれが耐水的に出来ているかもよくしらべるべきです。
 一流メーカーのものは安心ですが、安物には普通のベニヤ板が側にはりつけてあって、一年たらずでそれがべらべらはがれ、こまるものがあります。
 非常に腕のいい大工が台所をやる場合以外、こういう既製品の方が出来がよく、使って安心だと思う。特に、軽井沢とか箱根とかに週末ハウスをつくるようなとき、土地の大工にこういう細かい細工をさせるのは無理で、既製品の方がいい。
 流しと一緒に考えなければならないのはごみの始末ですが、これはごみ捨ての容器を傍らにおくか、ディスポーザーを用いる方法もあります。以前はダストシュートがよく用いられたが、これはごみ箱から蛆が上って来たり、シュートを伝って腐臭が逆流したり、蝿が多くなったりして、実に始末にわるい。近頃、ごみをポリエチレンの袋に集め、それをしっかりくくってごみ箱にすてる習慣がアパートなどで行われていますが、衛生上きわめて効果的な生活方法です。ディスポーザーはごみの粉砕装置を下部にもつ排水設備で、最近は国産品でも性能のいいものがあらわれています。菜屑、大根の切れっぱし、魚の頭や骨、卯の殼、何でもかんでも粉砕して泥状となし、水と一緒に屋外へ流し出せる。ディスポーザーは流しの底にとりつけるときと、調理台の上にとりつけるときとあります。
 レンジとともに考えなければいけないのは、排気の方法で、私は台所には必ず換気扇をつかうことにしています。換気扇はレンジの真上の壁に設けるのがよく、もしレンジが外壁に接していないときはその上にフードを設け、外壁の換気扇までダタトで導く。普通、このフードの大きさが足りないため、煙がその外へ逃げ勝ちになる。最近は、レンジフードも製品化されています。
 これは、フードの中に換気扇を仕込んだもので、レンジのすぐ上にとりつけるときわめて能率のよい排気が出来ます。

住まい暮らし生活
建設業者をどうやって選ぶか/ 有名な建築家に家の設計を頼むのは得か損か/ 見直されるプレハブ住宅/ 中高層住宅では流産しやすい/ 障害者や老人の住める街づくり/ 家を建てるときに一番気をつけなければならないこと/ 家も住む人とともに成長する/ 家造りは伴侶を選ぶのと同じ/ いい家を造るコツ/ 共通の室、リビングルーム居間/ リビングキッチンのおかげで台所が日の目をみるようになった/ 室内にはこんな配慮がほしい/ 楽しい食事の雰囲気をつくるには/ 台所は家の中の工場/ 台所はどの方位が一番良いか/ 働きよい台所を造るには/ 配膳棚と戸棚の設計/ 寝室の独立は生活の進歩/ 欧米の寝室には浴室がついている/ ダブルベットはこんなときには具合がわるい/ 寝苦しい夏の夜を涼しく過ごすための窓/ 和室の場合の寝室/ 居室の照明/ 便所の眺めは体に作用する/ 和式、洋式便器の一得一失/ 便所の造り/ 子供のための部屋/ 子供部屋の広さと方向/ 子供部屋の室内/ 部屋の集まり/ 家の中廊下/ 日本の風土や生活に適合した家/ 木造と補強コンクリートブロック造の長所と短所/ 鉄筋コンクリート造の長所と短所/ 鉄骨造の長所と短所/ 屋根と外装/ 床と天井/ / 近所の人に土地の住み心地を聞いてみる/ 北下がりの土地は買うべきでない/ 地下水と土質/ 日本の風土に合った昔の家/ 田舎家の夏/ 夏と現代の住まい/ 南側の庇は家造りのポイント/ 冬の住まい/ 住まいの暖房/ 暖気と換気、隙間風の防ぎ方/ 保温と暖房/ 暖房のための熱源/ 都市の中心部から閉め出される独立住宅/ 住宅のアパート化/ 高層住宅での生活/

      copyrght(c).住まい暮らし生活.all rights reserved

スポンサーリンク