子供のための部屋

 家をつくるとき、一番頭をいためるのは子供のための部屋です。新婚夫婦の家はもちろん当座は子供のための部屋はいらないが、やがて必要になるのはたしかです。しかし、子供が何人出来るか、全然見当がつかず、また、現実に子供が出来てみると、その内、男が何人、女が何人ということでプランは変ってきます。だから、予想によって子供室をつくることも仲々むずかしい。折角、子供のための室を用意しておいて、一人も子供の生れなかった家もあります。要するに、子供についての家つくりは、まあ賭け事のようなものと思わなければなりません。

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 さて、子供が何人か生れ、一応その家の家族計画のめどがついたとします。子供は段々と育つ。幼稚園から小学校の低学年の時代の手におえない悪戯ざかり、それを隔離する意昧での子供部屋が必要になります。そういう部屋を設ける余裕のない小住宅では、子供の育ちざかりの間、ともかく、家は見るかげがなくなるものと思わなければなりません。
 どこここということなくちらかり、まるで鼠の巣のような有様です。襖、壁、畳、すべてクレヨン画の練習場所となります。障子、その下半分は原則的に骨ばかりとなるでしょう。私が子供を育てた時代、古い家で障子の真中に大きなガラスがはまっていましたが、男の子の突き当った拍子に、ガラスが枠もろとも、すぽんと障子から抜けてしまった。窮余の一策で、上半分がただの障子、下半分が東障子(紙の代りに摺りガラスをはめこんだもの)という新年の障子を造らせました。建具屋はそんな障子見たことがありません、と変な顔をしていましたが、これは成功でした。どうやら、子供の被害は喰いとまった。やがて、小学校の三、四年になると、もう中学入試の準備である。気の早い家では、子供の勉強部屋を用意する。茶の間などで勉強させたのでは子供の気がちり、具合が悪いためで、やがて家庭教師にでもつくことになると、益々その必要がおこる。しかし、まだその年齢の子供たちは、親のそばをはなれてねることができない。親の方でもまた心配です。だから、子供部屋をつくってもただの勉強室兼遊び部屋にとどまることが多い。
 小学校の五、六年、中学一年、その頃から、子供室は寝室を兼ねるようになります。教育上、自分のことは自分でさせる意味からもよく、また、独りだけで本をよみ、物を考える機会を与えるためにもよい。子供二人なら、一つの部室に寝台を二つおいたり、二段ベットをつくったりしますが、そこで心配の種がも一つふえるのは男女の性別の問題です。
 ある女流教育家の説によると、男の子が中学一年に達したら、女の子と同室に寝かすべきではないという。兄がその年齢、妹がずっと幼い場合でもいけないという。逆に、上が女の子の場合は、まだ大丈夫だそうです。とすると、男女一人ずつ子供のある家では、どんなに小さくても、子供室を二つ用意しなければならないことになります。
 やがて、子供たちが高等学校から大学の時代になると、子供室は真剣な勉強の場所と化します。そういうある家では、二つの子供室の境の壁を防音的にしたいといいだした。よくきいてみると、一方の子供が勉強をしながら音楽を聞く癖があるためだという。
 理想的には、子供に一つずつ室をあたえ、しっかりと、その間を仕切ることがいいわけになりますが、もちろん、それだけの余裕のある家庭はざらにあるものでありません。大学卒業、就職、結婚、そうして子供たちはその家から巣立ち、子供室はもぬけの殼となります。そういうもぬけの子供室を二階に三つならべて暮している老夫婦の家庭を私は見たことがあります。
 このようなわけで、子供のための室というものは、時代とともに変転きわまりなく、全く仕末におえない。一度、私はそういう子供の先々を見越し、三人の子供のための室だけを別棟にした家をつくったことがあります。子供が巣立ったあと、子供夫婦の中の一組が、その別棟を改造して住めるようにと思ってですが、予想通りにゆくかどうか、今のところわからない。
 ある家では、隠居の老夫婦のすまいを庭の中に別棟とした。老夫婦のなきあと、子供夫婦の一組をそこへ住まわせるためだが、子供たちの間で、まだ隠居の元気なうちから、もうその家が取り合いになっているようです。

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