子供部屋の広さと方向

 私は中学に入った年から大学を出るまで、勉強室として六畳敷を与えられました。一間の押入がついており、その上段に夜具入れ、下段は雑物入れで、中はいつもちらかっていました。書棚は成長とともに段々大きなのと買いかえてゆき、洋服は壁につるしておきました。
 現代の子供室から見ると、随分原始的なものですが、しかし、広さがたっぷりあるため、友達が二、三人やって来てもゆったりしており、時にはそれがここに泊ってゆくことさえありまし。もし、これが八畳敷だったら、やはり広すぎて落ちつきが悪いかもしれません。また、四畳半だったら、それでも一人の勉強室としては充分ですが、友達が来たときはやはり窮屈でしょう。六畳とはそういう一人の室として、まことに適度です。
 今の子供室は普通勉強机、ベット、書棚、洋服入れがならび、時にその全部を造りつけにしてしまいます。きわめて普通につかわれるプランでは、室の幅は1.8m(一間)ではどうも狭すぎ、その奥行は3.6m(二間)では一寸おつりがきます。室幅は最小2.0m、できるなら2.1m(七尺)ほしく、ゆとりのあるものは2.4m(八尺)か2.7m(九尺)とる。
 では、1.8mの窓際ではどうしても駄目かというと、そうではない。それだって、子供室にならないことはないのですが、ただ子供が非常に窮屈を感じることになります。というのは、室を小さくしても中におく洋服入れやベットの寸法をつめるわけにゆかず、自然、人間の居場所である何もおいてない空間だけに皺よせがきて、猛烈に狭くなるためです。

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 これは子供室だけに限ったことではないのですが、家の中の空間というものは、二つの部分から成り立っています。その一つは、人間が自由に動き廻れる何もおいてない空間、そしても一つは椅子、机、ベット、戸棚など、広い意味での家具がおいである空間です。つまり、人の居場所と物の置旅所と一緒になったのが、家の中の空間なのですが、この中、きわめて融通性に富むのが人の居場所です。
 たとえば、廊下について見ても、普通90cm(三尺)あるものを、仮りに75cm(二尺五寸)にしたって、一寸狭く感じるだけで交通に不便はない。さらに狭くして60cm(二尺)にしたって、まだ大丈夫。さらに狭く45cm(一尺五寸)となれば、人間は一寸身をはすかいにして通るでしょう。でも通れないことはないのです。
 鵠沼に住んだ家で、私は三尺の廊下の片側に箪笥をならべた。狭くて、他に置場が発見できなかったためですが、そんな風に箪笥をおいて幅45cm弱に狭くなった廊下でも、結構使えるもので、大した不便のなかったことを覚えています。ただ、ぼんやりとそこを通り抜ければ、手の甲を箪笥の鍛にぶつけたりします。そんなゆとりのない家にながく住むことは、潜水艦内の生活と同様、必要以上にくたびれるだけです。
 これに対して、物の置場所の方は、たとえ幅が1cm不足でも、その役にたたない。日本古来の箪笥の幅は95cm(三尺一寸)あります。三つならべておけば2.85cm(九尺四寸)、だからどんなに無理しても四畳半に三つならべておくことができない。
 本棚の棚の間隔にしても、それが本のせいにくらべて僅か1mmか2mm不足なため、本がしまえないことのあるのは誰も経験しているところです。
 そんな風に物の方は全然融通がきかず、人の方はフレキシブルなため、自然、人間の居場所に物の置場所がくいこんできます。家をつくるとき、ともかく気をつけなければいけないのは、そういう物の置場である。
 むかし、日本のすまいには、ただ一面に畳が敷いてあるだけで、家具らしい家具がほとんどなかった。座敷におかれるのは火鉢とちゃぶ台ぐらいのもので、そのちゃぶ台すら江戸時代にはなかった。御飯をたべるときは、めいめいの膳を台所からもってきて、それで食事をした。食事がすめば、座敷はもとの畳だけの部屋です。
 まことに原始的な生活ですが、しかし、洗濯機だの冷蔵庫だのテレビだのと、かさばった道具をやたら買いこみ、それに居場所をみんな占領されて、あがきがとれずに生活している現代の人間とどっちが賢いか、ということも一応考えてみる必要があるでしょう。
 話が大分それてしまいましたが、ともかく、子供室はその広さにくらべて、置くべき物の量の多いところに特徴があります。だから、子供室の形や大きさをきめるときは、漠然とそれをきめて建ててしまったあとで、机やベットや洋服戸棚をどこへおくかを考えるのは具合がわるく、後悔することが多いのです。そうでなく、きちんとそういう物の置場をきめることで室の形をきめるべきです。
 これが居間のような広い室だったら、恐らくその必要があるまい。むしろ、そんな風な家具の配置計画をして室の形をきめるのでは、妙にせせこましいものが出来上るでしょう。
 次に、子供室をどの辺におくかの問題です。
 まず方向ですが、これは原則的に南がよい。真南より多少東、あるいは西へ傾いてもそれはよいが、大体南がよい。その理由はいうまでもなく、要するに南は冬あたたかく、夏涼しいからです。そして、子供室のような小さい室は、外界の暑さ寒さをきわめて感じやすく、一寸夏の日が射しこんでも、すぐ室内の温度が上ってしまうからです。
 次に東の方向。夏、まだ気温ののぼってこない時間に室内に日がさしこみ、午後の西日に対しては無関係の方向である点がよい。そして、南にしても東にしても、窓から布団を干せる便利があります。
 西、これは夏の暑さがやりきれません。
 北、冬の北風がつよく、それが窓の隙間からふきこみ、また、窓ガラスごしに室の暖かさをうばい、わずかの暖房では追っつかないことがあると思います。
 次に、全休のプランの中で、これをどこにおくか、ということです。大体次の二つの種類にわけることができます。つまり、
 一、夫婦寝室と子供室とを一かたまりとし、隣合せておくもの。
 二、夫婦寝室と子供室とを離してしまうもの。
 最初に話した欧米のすまいでは、二階をこういう寝室群のおき場所としており、夫婦寝室と子供室はくっつき合っています。母親が夜中に子供の様子を見に行ったりするのには都合よく、また、こうすれば、さらにそれに浴室、便所をくっつけて、純粋にプライベートな部分を家の中につくることができる。
 これは何も二階でなければできないことでなく、わが国のごとく、浴室を一階におきたいような場合には、一階でもいい。近頃、そういう寝室群を家の一階におくようプランがふえてきています。
 第二の夫婦寝室と子供室を離すことは、何も離したいために離したというより、プランの作成上離さざるを得なくなった場合が多いように見受けます。ともかく、こういうプランでは、そのいずれかの室から便所や浴室へ行くのが不便になるでしょう。だれかが病気で自分の部屋に寝ているような場合、客が来ているかも知れない居間を通りぬけないと便所へ行けないのでは、パジャマ姿を客に見せることになり、具合がわるい。
 プランニングとしては、寝室群が一まとめになり、これに浴室と便所が附属しているのが一番いいと思いますが、坪数をきりつめた小住宅では、えてそれがそうゆかないことが多いのです。

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