日本の風土や生活に適合した家

 家の傾向については、それを一括すると次のようなことになります。
 椅子式の生活が非常に発達した結果、部屋の個性が非常に強くなった。
 夫婦寝室、子供室が独立するようになり、家族の各員のプライバシーが尊重されるようになった。
 客の接待を主体とする家から、生活本位の家へと変った。
 家族共同の生活の場として、居間がゆったりと広い室になった。また、居間が応接室を兼ねることが多くなった。
 リビングキッチン(居間+食堂+台所)、ダイニングキッチン(食堂+台所)が発達し、また、台所が位置的にも質的にも重視されるようになった。
 昔、家の格式を表現する意味で重視された玄関が、出入口として必要な広さの限度にとどめられるようになった。
 水洗便所の発達とともに、便所の位置が自由となった。家の機能上一番都合のいい場所に便所が配置され、時に二階へそれが置かれる場合もできてきた。
 和室は量的にもきわめて減少しましたが、その転用性のゆえに、また、一軒に一室でも和室のあることが極めて便利なため、純椅子式の家でも、和室がすくなくも一つある場合が多くなった。
 生活の発達にともない、いろいろな種類の戸棚が必要になった。

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 和室の便利な点は、そこに何の家具もおかずに人が寝られることです。純粋に椅子式の部屋だと、田舎から老人が出て来て泊るときとか、病人があって看護婦を泊めねばならぬ場合困ってしまいます。たとえ三畳でもいいから和室が一つあるのは便利で、また、畳の室があればそこへ時々ごろりと大の字になることもでき、突然の来客のとき、居間にちらかったものを急いでそこへほうりこんでしまうこともできます。
 そんなわけで、一時は椅子式オンリーの家が大分ふえましたが、近頃は畳式を一寸加味した家があらわれ出したのです。
 次に、戸棚ですが、ともかく生活が進むと、戸棚が余計にいるようになるものです。一部の建築家の設計した家には戸棚のきわめてすくないのがあり、雑誌の写真だと仲々それがいかすのですが、三、四年たってその家を訪れると、全くひどいものです。家中一面にちらかっていて、身のおきどころもないような状態です。やはり戸棚は必要だとつくづく感じます。
 次に、各室に必要な戸棚類をあげておきましょう。
 玄関およびその附近 - 下駄箱、傘入れ(と傘立)、外套入れ、スリてハ入れ。
 居間と食堂 - 居間用の戸棚と棚、テレビ用棚、薬戸棚、食器戸棚。
 台所 - 食器戸棚、食物の収納場所(米びつ、野菜入れ、漬物入れ等)、冷蔵庫、調味料戸棚、掃除道具入れ(これは台所に限られるわけではなく、どこでもいい)。
 夫婦寝室 - 夫婦の洋服戸棚、タンス、整理ダンス、化粧戸棚(化粧机のあるとき)、書棚(書類のある場合)、雑物入れ。
 子供室 - 洋服入れ、書棚、雑物用の戸棚。
 書斎 - 書棚、雑物用の戸棚、ゴルフ道具入れ。
 洗面室(脱衣室) - 化粧戸棚、バケツその他の入れ場。
 考えうる戸棚を皆あげるとこんなことになりますが、これだけの戸棚でまだ物が入れきれないときは、納戸を設ける。納戸は夫婦寝室に附属させることもあり、また、その中にしまうものの種類によって全然離れた場所におくこともあります。
 さて、以上の諸室をどういう関係におくかで家のプランはきまってくるのですが、これは実に千差万別です。しかし、現代の家の中を大ざっぱに次のように二分することができます。
 A 寝室系(夫婦寝室、子供室、浴室、脱衣室、便所、洗面所)
 B 居間系(居間、食堂、台所)
 寝室系の諸室は純粋に家族の私生活の場で、時にそれ全部を二階へもってゆく場合のあることは、前に話した通りです。ともかく、これらの諸室は空間的に一かたまりになるのがよく、たとえば、夫婦寝室と便所との間に居間がはさまってしまったりすると、病気のときなど、パジャマのまま客のいるかも知れぬ居間をつっきって便所へ行かなければならぬようなことがおこります。
 居間系の諸室は、打って一丸となってリビングキッチンと化することもあり、台所と食堂と合併してダイニングキッチンとなることもありますが、要するに家族共同の場所であり、応接の場所でもあり、寝室系よりも社会に接近している。だから、玄関は、普通、居間系の部分に設けられるが、時には、居間系と寝室系の一度境目に玄関をおくこともあります。
 次に部屋と部屋との交通の問題になりますが、戦前には、前にいったように、中廊下を利用して各室を完全に独立させる方法がとられました。室のプライバシーが尊ばれるようになったためですが、それよりもっと以前の日本古来の和風住宅では、室と室が襖仕切で連続し、室を通り抜けて別室へゆくことを平気でやった。室のプライバシーが全然なかったわけで、そういう時代から中廊下の時代に進んだのだが、戦後、ふたたび室の通り抜けがしきりに行われるようになりました。
 玄関から居間を通り抜けて寝室へゆく、居間から子供部屋を通り抜けて寝室へゆく、子供部屋から別の子供部屋を通り抜けて居問へゆく。
 そんな風にして、戦前の中廊下を背骨としたプランは現在減りつつありますが、要するに、これは家を構成する諸室を神経質に独立させる必要があまりないことを覚った結果です。時に、空気的に屋内のあらかたの部屋を一つにしてしまう場合すらあります。もちろん、その一方で夫婦寝室や子供室をきびしく独立させる気運のあることは前にいった通りですが。
 要するに、現代の住宅はすべての点で過渡的といえます。畳式から椅子式への過渡であり、中廊下式から何か新しいものへの過渡であり、その間で旧来の和風住宅の良さが再認識され出したりしている、といった状態である。やがては、日本の風土によく合い、日本人の生活にうまく適合した家ができるに相違ありません。

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