鉄骨造の長所と短所

 鉄骨造は、近代構造の中では比較的古いものに属します。その歴史は鉄筋コンクリートより遠くながいのですが、しかし、わが国で鉄骨造を住まいに利用しはじめたのはきわめて新しく、戦後のことです。それは軽量鉄骨(ライトゲージ)と称する家造りにきわめて便利な、簡単な鉄骨があらわれたためです。
 この構造は、柱や梁などで家の骨組を形づくり、それに壁や屋根をとりつけてゆく点、木造に非常によく似ているが、その骨組の接合方法がきわめて頑丈である点で普通の木造よりはるかに進んでいます。

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 その長所は、第一に骨組が強靭で、地震や台風などに抵抗する力のきわめて強いこと。第二に、家自体の目方がきわめて軽いため、不同沈下をおこしたりする恐れのすくないこと。これはブロック造や鉄筋コンクリート造にない特長です。そして、第三に火に燃えないこと。鉄骨造が木造とちがって火に燃えないのは誰でも知っており、これはたしかに一つの特長ですが、しかし、これを耐火構造とはよばない。火に燃えはしないが、火に強いとはいえないからです。なぜといって、その骨組をなす鋼鉄は三五〇度ぐらいまでは大体信用のおける材料だが、それ以上の高温になると強度が次第に落ちて、そう文夫だとはいえなくなるからです。
 ところが、家の中には木製の家具をはじめ、燃える生活用品が一杯つまっており、それに火がつけばことによると一〇〇〇℃以上の高温となるかも知れない。だから、鉄骨造の不燃性をよく発揮させるためには、まず家の中に燃えるものをあまりおかないことなのです。
 戦災地をその直後に見た人は誰でも知っていると思うが、焼跡に鉄骨の家が飴のように曲ってちらばっていたものである。その跡仕末からいうと、焼けて灰になってしまう木造の方がかえっていいくらいのものである。だから、不燃という意味で鉄骨造の家を建てられる方は、まずその住まい方に気をつけることが大切です。
 ところで、鋼鉄を骨組とした家はすべて鉄骨造なのだが、現在の鉄骨造は一つの共通性をもっています。それは、その骨組に、あらかじめつくられた塗板(ボード)や窓枠や屋根板をはめこんで家を仕上げる組立式である点です。具休化されているいわゆるプレハブ住宅のあらかたは鉄骨造です。
 こういう組立式の家の長所は、壁や屋根が工場でつくられるボードであるため、大工や左官屋のつくる壁や屋根の下地とちがって、それにすきな性質を与えることができる点です。たとえば、耐水性保温性のある厚さ5cmの壁板というようなものを自由につくりうる点です。木造の土壁、ブロック造の壁、鉄筋コンクリート造の壁、これらは皆壁には相違ないが、何か構造体と抱き合せで自然発生したという感じがつきまとう。それに対して、こういう壁用のボード類はその目的をしっかり意識した壁のための壁であり、この点、きわめて進歩したものといえます。これも現代の鉄骨のすまいに附随する一つの長所といえるでしょう。
 では、欠点は何かというと、第一に錆の問題です。鉄は錆びやすい。コンクリートのビルには鋼製建具が使ってありますが、あのごく普通の寿命はおよそ三十年ぐらいです。錆には錆びどめ塗料がありますが、場所によっては、それを建築後に重ねて塗ることができません。そういう所から錆が進んで、結局建具をかえなければならなくなるのですが、こういうことが鉄骨の家にもおこると思う。その構造をよくしらべると、錆びどめペンキをぬり変えたくても、刷毛の入らない場所が方々にあります。ともかく、鉄骨の家を建てられる方は、どんな防錆処理が鉄骨にほどこされているかに気をつけた方がいい。
 第二は、模様替えのむずかしいことです。鉄骨の柱は鉋でひくわけにゆかないから。第三に、万一、小火でもおこして、たとえば屋根裏の骨組みの一部が飴のように曲ったりしたとき、その修理のむずかしいこと。第四に、鉄の部分がさわって冷たくかつ結露しやすいこと。木造の家にすみなれた人はこの辺に一寸抵抗を感じるのではないかと思います。
 しかし、そういう欠点はあったとしても、地震の多い日本などでは、将来伸びていい構造の一つであることに間違いなありません。そういう時に安心して住んでいられる家こそ、健康な家といえるでしょう。

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