北下がりの土地は買うべきでない

 その敷地の良否をきめる第一条件は、まず、その周囲の土地の高低の状態です。
 南側が低く開けている土地、これは誰でも知っているように、夏は南風がたっぷり入って涼しく、冬はあたたかい。南斜面は日射をたっぷりうけるからです。
 北側がだらだらと低くなっている土地、これは冬の北風のきびしいことを覚悟しないといけない。もっとも、家の北側に森があるとか、家がたてこんでいるとかすれば、それほどのことはないが。農家は田園の中に一軒たっていたりするが、その場合、必ず北側から西側に林がつくってあります。冬の北西風をよけるためで、これを屋敷林といったりします。
 西側の低く開けた土地、これは東京の郊外では富士から秩父連山を見晴らして気持のいい地勢だが、西日の強いことを覚悟しないといけない。もっとも、夏の西日はやりきれないが、冬の西日はありがたいものです。
 以上は敷地の周囲の地勢についてだが、敷地そのものについても、大体それに近いことがいえます。つまり、南下りの敷地は夏涼しく冬あたたかく、そして家から空の見えることが充分だから、何となくからりとしています。北下りは夏の風通しがわるく、冬が寒く、おまけに南側の庭に降った雨水が家へ向って流れ勝ちだから、家が何となくじめじめする。まちがっても、こういう地所を買うべきではありません。

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 土地の高低に関連して、も一つ知っておかなければならないのは、地盤の問題です。それは大ざっぱにいって、低い土地は地震のときよく揺れることがあり勝ちだということです。東京の地盤は、誰も知っているように、山の手と下町とに分れています。山の手は土地が高く、下町は低いが、それだけでなく地底の構造が非常にちがっています。山の手では地表近く世に洪積層といわれる古い地盤があります。これは相当の深さをもち、よくしまっています。洪積層の一番の上層をなしているのが関東ローム層、つまり赤土の層です。家をつくるとき、一寸根伐をして赤土が出ると皆よろこぶのは、それが洪積層というしっかりした地盤の上にある証拠だからです。
 ところが、下町へゆくと、この洪積層が地下深くもぐってしまいます。上野近辺でいうと、西郷の銅像の前の崖、神田でいう七駿河台のニコライ堂の先、あの辺から洪積層は地下深くもぐりはじめます。そのもぐり方は先へゆくほど深く、隅田川から荒川放水路辺にゆくと地下四〇メートルから五〇メートルほど掘らない七洪積層が出てこないところがあります。そういう深い洪積層の上には沖積層と称する新しい柔かい地盤がのっています。
 もちろん、平家か二階建程度の住宅を建てるのに、沖積層の上だから駄目だということはありません。この地盤が柔かいといったところで、その程度の家をささえる力がないというのではない。ただ、知ってねかなければいけないのは、こういう柔かい地盤は、地震のとき、ゆらゆらと周期の長い揺れ方をし、それが木造の家などをひどくいためることです。関東大震災や安政地震に、本所深川の被害の特別大きかったのは、要するに、あの辺の地下の沖積層が非常に深い為だといわれています。
 こういう土地に家をたてるときは、できるだけ壁の中に筋違をいれることです。二階建の場合は、特にその二階部分の筋違を沢山いれることである。
 では、山の手の方は安心かというと、必ずしもそうでない。それは洪積層が山の手の全面に露出しているわけでなく、その間にひだ状に、谷間が喰いこんでいて、これには相当の厚さの沖積層がのっているからです。山の手には谷間が多い。四谷というのは、あの辺に谷が四つあったため、そんな名がついたというし、市谷だの世田谷だのと、谷のつく地名の多いことは、よくそれを物語っています。だから、山の手でも地震に割と安心なのは、高い台地の部分で、低い谷間の部分はやはり、地震に相当揺れることを覚悟しないといけません。
 大ざっぱにいって、高い土地はよく、低い土地は悪いことになるのですが、その途中の坂地を造成してつくった土地はどうかというと、ここでは一寸別の心配が生れます。それは、その敷地の一部が盛土じゃないかということです。坂地のままでは家の敷地にならないから、普通これを段々形に整地する。すると、敷地の前半部は後半部の勾配部分をきりくずした土を盛って造るのを普通とします。こういう部分に家をたてれば、たちまち不同沈下をおこすでしょう。もっとも、その整地が何百年か以前に行われた古い敷地なら、まあそれほどの事はないかも知れないが、盛土の上に家をたてるときは、必ずその下の地山まで杭をさげるのを家造りの定石としています。
 つまり、地盤というものは古いものほどよくしまって丈夫なので、沖積層より洪積層がよく、その沖積層も盛土よりもましで、盛土の中でも、二、三年以前にやったような新しい奴が一番いけないのです。

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