地下水と土質

 土の下には水があることは、井戸というもので誰でも知っています。地下水は地下数メートルの所にあることもあり、地下数十メートル掘っても出てこない所もあります。また、同じ土地でも、その地下水位が変ることがあります。東京の中心部では、地下水をくみ上げることが非常に多くなって、近頃地下水位が下ってきています。また、住宅地で、そこに大アパートが出来て矢鱈に地下水をくみ上げたため、地下水位が下ったという例もあります。目に見えない地下のことだけに、仕来がわるい。

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 地下水が浅すぎると、建てた家が湿気がちです。地所さがしの時、気をつけなければいけない事の一つですが、これが一寸判らない。以前、親類のものにたのまれて、家の敷地を見て歩いたとき、一つ格安の手頃な土地がみつかった。ついて来た不動産屋もいやにすすめるので、一寸気が動いたが、どうもその辺に建ちならぶ家が何となくからりとしていない。湿気た気分である。で、近所の家へ行って、井戸をのぞかせてもらったら、すぐ目の下に水面があった。おそらく、地下水位は三メートルくらいのものでしょう。こんな所に家をたてれば、家もじきに腐りはじめるし、第一、健康上よろしくない。崖の下のような所には時折そういう敷地があります。
 地下水の深すぎる所、これは水道の完備した都会地では問題はないが、井戸をつかわなければならない土地では大問題です。私は多摩川の上流地域で、地下六〇メートル掘っても一たらしの水さえ出ない土地を見ましたが、近頃開発されている別荘地などで時折こんなのがあるから、気をつけないといけない。近所に火山のあるような土地は、地下に厚く軽石の層があって、掘っても地下水のなかなか出て来ない所が時折あります。
 それから、地下水と深い関係をもつものに、土質があります。われわれがごく普通、土と呼んでいるものは、その粒のあらさによって、砂、シルト、粘土にわけられます。砂と粘土とは、砂遊びと粘土細工で子供のころから誰にもなじみが深いが、この他、粘土より多少粗目のものをシルトと呼んでいます。陶器は普通粘土でつくるが、民芸品のざらざらした味のものにはシルトをつかったものもあります。
 土はこの三つを成分としていますが、砂質の土といったところで、純粋に砂ばかりではありません。中に多少の粘土やシルトのまじっていることは、それをコップの中にとかすと判ります。多少の濁りの生じるのは、砂以外のもののまじっている証拠です。
 しかし、そういう細かい穿堅をしないことにして、大きく砂質の土と粘土質の土という風にわけて考えると、この二つの間には大きな性格のちがいがあります。それは砂地はよく水を下へ透し、粘土地は水をその中にふくんで離さないことです。
 東京附近では砂が表土をなす敷地はまずないが、湘南地方へゆくとよくあります。以前鵠沼に住んでいたことがあり、そこが砂地だった関係上、砂地の生活を多少経験しているので、それをお話しましょう。
 まず、第一の特徴は、それが原則的に乾いてぱさぱさしていることです。雨が来ればぐっしょり濡れるが、数時間で上側から乾いてくる。そのため、土が風で移動しやすく、一寸した強風で基礎の外側が掘られたようになることがあります。基礎のまわりを幅60cmばかりコンクリート叩きにしたら、その縁の外側がまた風でえぐれてきました。
 第二に、こういう土地は日中は暑く、日が沈むと急に冷えることです。これは砂の中に水分がほとんどたまってないため、砂粒間は空気の層で、それが地下深く暑さ寒さを伝えることを喰いとめるためだと思います。つまり、上側だけが簡単に、日がさせば熱くなり、沈めば冷たくなるのだろう。それと、ぱさぱさな砂は熱容量が小さく、寒暖を感じやすいということでしょう。
 ともかく、一日中の暑さ寒さのかわり方のきついところに特徴があります。
 第三は、門や垣根の掘立柱が非常に早く腐り出すことです。一寸考えると、じめじめした粘土質の方が早く腐りそうですが、そうではありません。腐り出すのは地表の一寸下あたりで、これはその部分が、雨のときはたっぷり濡れ、晴れればよく乾き、乾湿が適当に交代して、腐朽菌の生活に大切な空気と水とが適度に供給されるためだと思います。
 以上は砂地の欠点だけ特に取り上げて見たのですが、もちろん、いいところも充分にあります。それは何といってもじめじめせず、よく乾燥することで、緑の下などをのぞいて見ても気持のいいようによく乾いています。
 今、私は関東ローム層の上に住んでいますが、こういう粘土と砂とが適度にまじったがっちりした土質の方が、私自身としては家造りに仕末のいいような気がする。もっとも、これは人のすきずきで随分ちがう事柄ではあります。

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