南側の庇は家造りのポイント

 真南にむいた窓の庇については、これは春分の正午にその庇にさえぎられて窓内へ日がさしこまなければ、秋分までの夏の期間、絶対に日がさしこまない。ではどのくらい庇を出せばそうなるかというと、これは春秋分の日南中太陽高度から簡単に割り出されるので、窓のせいのおよそ七掛です。窓のせいが二メートルだったらその真上から水平に長さ一・四メートルの庇を出せば、夏の期間絶対にその窓へは日がさしこまずにすみます。
 もちろん、普通のすまいでは何もこう細かく神経質に庇の寸法をきめる必要はありませんが、ともかく南側の庇は、出せぼ出すほど覿面の効果のあることは覚えておいてよいでしょう。そしてその効果は夏至に近い頃ほど大きく、太陽高度の大分低くなる残暑の頃にはそれほどではなくなります。そして、秋分をこえて冬に向かう頃は、太陽はさらに高度を下げ始めるから、日向ぼっこの有難くなる季節には、庇の出張っていることがそれほど気にならない。南側の庇の有難さは、こんな風に夏にのみ特効的で、それが冬に障害をおこさない点です。

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 次は太陽の幅射熱と家の外側をつくる屋根や外壁の問題ですが、これについては前にも一寸ふれたように、白に近い色ほど幅射熱を反射してしまい、アルミニウムのように銀色に光っているものはその点最も優秀です。よくガスタンクなどが銀色に塗ってありますが、これも幅射熱を極力はねかえすための目的からです。バクミンスター・フラーは、かつて屋根といわず外壁といわず全部アルミニウムで包んでしまった弁当箱のような家をデザインしましたが、住みよさの問題はともかくとして、太陽熱のために屋内が暑くならない点では効果的だと思います。
 では、一番幅射熱を吸うのはどんな色かというと、それは黒、それにつづいて赤です。自動車でも黒いのと白いパトカーでは、夏の内部温度に大変な差があります。日本古来の鼠色の瓦屋根はその点きわめてまずいが、本瓦の中でも磨きと称する銀色に近いのはよいわけです。
 もちろん、輻射熱の内部への伝わり方は、外面の色と同時に、屋根や外壁をなす建築材料の断熱性によっても非常にちがう。茅葺などもその表面では幅射熱をたっぷり吸うと思うが、それが室内へ伝えてこないのは厚ぼったい茅の層に強い断熱力があるからです。
 屋根や壁の断熱性をはかるものさしとしては、熱貫流率がある。熱貫流率とは、内外の温度が1度のとき、その壁面(あるいは屋根面)1平方の面積から一時間に何キロカロリーの熱が伝わるかを示す量です。こういう定義のきらいな人は、こんなことを覚えなくてもよい。ただ、熱貫濡事の小さい壁ほど断熱力の大きいこと、熱貫流率3程度の壁はごく普通の平凡なもの、それが5なら断熱性がきわめて薄弱なもので、人間なら虚弱体質です。また、それが1なら断熱性は特に優秀で、断熱壁と銘打ってもをはずかしくないものです。参考のために、いろいろの屋根や外壁の熱貫流率をリストとしておきましょう。
 次に庭からの幅射です。庭の木木、石、土、テラスなどからのほてりをどうしてくいとめるか、これは仲々の難問題です。というのは、大体庭というものは家の南側にあり、それに面する関口部は家中で一番大きい。しかも夏の南風をうけいれるために、そういう開口部は全部開け放たれているのが普通で、そのため庭からの幅射は遠慮なく屋内にはいりこんでくる。それを遮断する設備をつくれば、また南風をもくいとめてしまうにちがいありません。角をためて牛を殺すことになります。
 これは庭に水をまいて、そのほてりをさますより手がないと思う。つまり打ち水です。われわれの祖先はその点きわめて賢明で、夕方、庭へ打ち水をすることを夏の日課とした。打ち水を楽にするために庭先へ散水栓を一つ設けることです。そして、ホースの水を思う存分庭中へまき散らせば、たちまち家の中に涼気がわき上がるでしょう。
 空からの幅射、これもばかにならない。太陽のいない空からはもちろん直接の日射はないが、それでも、空そのものから幅射熱がやってきて、これによっても窓ぎわはむっと暑い。これは窓から腹をたらして遮るべきでしょう。もちろん日が沈んだらさっそく簾を巻き上げ、夜の涼風をうけいれることです。
 こんな風に、夏を涼しく暮らすためには、その時刻時刻にふさわしい防暑方法を講じることが大切で、そのためまめに頭をはたらかせることがどうしても必要です。

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