住まいの暖房

 暖房には古来いろいろな方法が考えられ、世界の各地で発達してきました。西欧を中心として普及したのは暖炉ですが、これは合理化された屋内焚火である。室の一隅に炉をつくり、そこで焚木を燃し、その煙を煙突でもって屋上に抜くものです。煙突のつくり方が暖炉構造の急所で、これをやりそこなうと煙が室内に逆流したり、煙が抜けすぎ、それと一緒に室内の暖気が煙突から逃げ、かえって室内を寒くなってしまったりします。

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 オンドルは朝鮮に発達した方法で、床下に曲折した煙突をつく祢り、焚火の煙をそれへ流し、まず床をあたため、あたたまった床で室内をあたためるものです。もちろん、木製の床ではたちまち火事になるから、朝鮮人は石の板をもって床をつくり、その上に何枚もの紙で目貼りし、その上にゴザやアンペラを敷いて生活してきました。これはわずかの燃料できわめて能率的に暖房のできる点に特長がありますが、室内がひどく乾燥する欠点があるという話です。
 ペーチカはロシアを中心とし、中国北部あたりまで普及している暖房方法で、これにはいろいろな種類がありますが、中で壁ペーチカと称するのは、朝鮮のオンドルを竪に起して壁としたようなもので、煉瓦の壁の中にオンドル同様の屈曲した煙道が通っています。
 これもきわめて能率的な暖房手段ですが、オンドルやペーチカに共通していることは、一冬中連続して暖房を要するような土地でなければ不適当だ、ということです。
 何故といって、石の床や煉瓦の壁は、一度暖房の火を落してさましてしまうと、今度火をもしても容易のことでは暖まってこないからです。つまり、煉瓦や石は熱容量が非常に大きいのです。熱容量が大きいとは、暖まりにくくさめにくいということで、一度暖まった石の床や煉瓦の壁は、一寸ぐらい火を落しておいても容易なことでは冷たくなりません。その性質を巧みに利用したのがこの寒地向暖房方法なのです。
 ペーチカやオンドルの現代化されたものが、北海道を中心としてはやり出していますが、これも要するに北海道がそういう寒地的条件をそなえているからです。東京のように、時折暖房するのがもったいないように暖かい日のつづいたりする土地では、こういう持続的暖房が必ずしも必要ということは出来ないと思います。
 では、日本では古来どんな風の暖房をしてきたかというと、いうのが恥かしいくらい貧弱な方法しかなく、要するに火鉢と矩燧しかありませんでした。しかし、こういうものは単に、手の先や足腰や、身体の一部だけあたためるのが目的だから、それを暖房というのは間違っています。もちろん、火鉢だって室内全部を暖めることができないではない。しかし、炭火はたえず一酸化炭素を発生し、室内を気持いいほどの温度にあたためれば、中にいる人が必ず炭火中毒をおこすことは、大分昔、ある学者が証明しました。
 昭和二十四年頃、戦後はじめての鉄筋コンクリート造アパートが高輪にできたとき、その中で、ひと冬のうちに何十件かの炭火中毒事件がおこりました。要するに戦中戦後のすまいが隙間だらけなバラックで、一酸化炭素が室内にこもる心配がなく、炭火の猛毒さへに用心が不足していたため、こんなことになったのでしょう。外国では、自殺の手段として、室内で木炭をたく方法があるといますが、煉瓦造のような気密な住まいだったら、たしかにそれは有効な手段にちがありません。
 一室ごとに独立した暖房用具を用いることから進んで、家の全部を一体として暖房する方法が、昭和四十年代に入って盛んになってきました。またこれとともに、夏の冷房をもあわせて行なう空気調和方式も行なわれ出しています。
 中央暖房は、家の一隅にボイラーを据え、そこでつくった湯なりスチームなりをパイプで各室に送り、ラジエーターによって室をあたためるものです。パイプを床下にはわせて床暖房とすることもあるが、畳の室は、畳が乾燥してガサガサし出すのでうまくありません。
 またファーネスの熱であたためた空気をダタトによって各室にみちびくこともありますが、この場合は冷凍機もあわせ利用し、加湿も行ない、暖冷房兼用の空気調和方式とすることが多い。
 これと全然別の発想により、ボイラーと冷凍機によってつくった温水冷水をパイプで各室にみちびき、そこで暖気冷気をつくるファンコイルユニット方式も盛んにつかわれはじめています。これは室ごとに室温をコントロールできる点が非常によい。
 こういう中央集中式の機械設備の欠点は、ひとたびそれに故障がおこると全機能が停止してしまうことです。熱交換機の故障により、冬のさなか一ヵ月間、寒さにふるえて暮らさなければならなかったマンションの実例もあります。中央暖房は、年々改良され、新しい製品がつぎつぎに発表されるので、機種の選定は十分研究して、優れた製品、アフターサービスのよい業者を選ばなければなりません。

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