住宅のアパート化

 農村はおいては家がきわめてばらばらに建っている。どんな大きな声でどなっても、おそらく隣家へきこえることはないでしょう。これが農業国日本におけるきわめて典型的な家のありかただったと思います。
 商工業が発達し、都会へ人口が集中するようになって、次第に家と家がくっつきはじめた。農村の生活においては万事が自給自足で、水は井戸水を使い、排便は田畑の肥料とし、食料にしても味噌から漬物類にいたるまですべて自家製だったが、都会の家がくっつき合ってくると、それに応じた便不便が生じてきました。井戸水にしても各戸が自分の井戸を掘る手間をやめて、共同井戸が発達しました。排便の処理は肥料としてまきちらす田畑が近所にない以上、誰かがそれをくんで郊外へ運ばなければならない。おわい屋ができました。都会では味噌を自分でつくっている暇がない。次第に、味噌は味噌屋で、醤油は醤油屋で、酒は酒屋で売るようになり、食料はつくるものから買うものへと変ってきました。
 現在、都市生活においては、水には水道、燃料には都市ガス、排便の処理には下水ができて、一切の生活の仕方が農村と根本から変わってしまっています。

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 その一方、家をたてる敷地は次第に狭められ、細分化されつつあります。親の代の大きな家をとりこわし、そこへ三人兄弟が別々の家をたてる、といった例は随分あります。旧大名の何千坪という大邸宅は、土地会社の手で分譲されるのが通例となりました。以前には、あぶなくて家の建て手のなかった崖上の土地とか、いつ洪水の危険がせまるかもしれない川べりの低地にも、家はぎっしりたてこみはじめました。
 郊外に敷地をもとめたくても、その郊外すら見渡すかぎりのいらかの波である。ここまで来たら、最早敷地を空中にもとめるより手がない。そんなわけで高層アパートが発達したのだと思います。家を高層化するとは、要するに空中に敷地を造成することなのです。
 アパートにおける高層の生活ですが、もしこういう建物が今から百年前に突如としてできたとしたら、おそらくその生活についてのいろいろな批判や臆測がおこったと思います。イギリスで、はじめて汽車ができたとき、そんな高速度に人間が耐えうるか、どうか、という不安が社会にまきおこったようです。その汽車なるものが、向い風に合うととまってしまい、馬車と競争して負けるかも知れないようなものだったのだという。未知の生活について人間が不安をもつのは一つの本能だが、それをのりこえのりこえ、ともかく今日の生活文化をうちたてたのですが、現在、そういう高層の生活への不安はすでになく、やがてわが国でも高層や超高層アパートが続々実現すると思います。

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