いい食器を日常的にも使う

 家族用、来客用の区別をやめ、いい食器を毎日の食事にも、来客があったときにも使うということには、数を減らすことの他、もうひとつメリットがあるのです。
 私の知り合いにも、そういう食器の使い方をしている家庭があります。かなり大きな家なのですが、食器棚はほんとに小さなものがひとつあるだけ、それだけのスペースで家族全員の食器がきちんと収まってしまうということです。これは明らかに数を減らすことのメリットです。
 さて、もうひとつのメリットについて、その奥様の言葉を拝借しましょう。いい食器で毎日食事をするのは、とてもいいことだと思います。まず、物を大切にする心が生まれてくるんですね。子供達にいちいち、大切にしなくちゃダメよとか、壊しちゃいけませんよ、なんて注意しなくても、いい食器を使っているんだという意識が、自然に物を大切にすることを教えるんですね。それに心の豊かさも生まれてくるみたいで。
 こんな精神的なメリットもあるというわけです。たしかに、揃っていない中途半端な食器よりもいい食器で食事をした方が、心も豊かになりそうですね。第一、食事そのものだって、ずっとおいしいに決まっています。
 この家庭では食器に対する考え方が、随所に生きているようです。つまり物全体について、いい物をひとつだけ揃え、それを日常生活のなかで大切に使っているのです。私はそんな生活のしかたがとてもすばらしい気がします。
 収納に関するかぎり理想的だといってもいいと思います。事実、30坪ぐらいの建物に、収納スペースはわずかしかありません。しかも収まるべきところに、物がきちんと収納されているのです。
 ほんとうの豊かさというのは、物をたくさん持っていることではなく、いい物を必要な数だけ持っていて、しかもそれを毎日の生活のなかで充分に使うことなのだ、そんな気がします。

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 ここに面白いデータがあります。それは、料理熱心な主婦ほど持っている食器の数が多いということです。次のような考え方がそうさせるのでしょうか。
 こんな料理にはこのお皿が合う、この料理なら、このお皿に盛ればグッとひき立つはず、サラダはやっぱりクリスタルのサラダボールでなくちゃ。
 これでは食器がどんどん増えるのは当然、料理熱の高さと比例して、どこまでも増え続けていきそうですね。それはそれなりに夢があることですし、家族に少しでもおいしく食事をしてもらおうという気持ちは、大切なことでもあるのですが、こと収納の点では問題がなくもありません。
 食器棚を見てみればすぐ分かることですが、標準的な食器棚は、その棚板の間隔がだいたい決まっています。
 一種類の食器を重ねて置いてみると、棚板と棚板の間にまだ余裕のスペースがあるのがふつうです。そこで、そのスペースを埋めるために別の種類の食器を重ねることになります。どの棚板にもそのようにして、何種類かの食器が重ねられるわけです。どこにもスペースの余裕がないくらいにびっしりと積み重ねられた、食器、また食器。
 今までの収納の考え方からすれば、これほど見事に詰まった食器棚は、収納として満点が与えられたかも知れません。
 しかし、使いやすさという点から見ると、お世辞にも満足できる収納とはいえません。なぜなら、出すときのことが考えられていないからです。例えば、料理ができあがって、この料理ならあのお皿がぴったりだと考えたとします。
 さて、食器棚を開けて目的のお皿を探します。ところが目的のお皿が何段にも積み重ねられたいちばん下にあったとしたらどうでしょう。上から順番に取り出していって、それを使うでしょうか。面倒だからと、いちばん上のお皿を使うのではありませんか。
 こんなことは、面倒くさがりやの主婦に限ったことではありません。主婦にとって食事の仕度はいそがしいもの、悠長にいちばん下のお皿を取り出す時間の余裕はないのがふつうなのです。
 毎日がこんなふうにして過ぎ考えてみたら一年365日、いつも取り出しやすいいちばん上のお皿を使うということになってしまうのです。これは明らかに収納のマイナス点です。スペースをすべて無駄なく使って、ぎっしりと収めるという収納の方法には、こんなデメリットがいつでも背中合わせにあるのだ、ということを知っておいてほしいのです。
 私達が考え、実行してゆく収納にとって、そのようなデメリットはぜひとも排除してしまわなくてはなりません。
 いつでも必要なときには、すぐに出せるというものでなければいけないのです。持っている物を余分な労力を使わずに100パーセント生かして使える、ということが大切なのです。
 では、その原則にしたがって、積み重ねられて使いにくい食器の収納を、いかに使いやすく変えるか、その解決策を考えてみましょう。
 もし、あなたの家の食器棚の棚板の間隔には、三種類の食器が重ねて収まるとします。それならば、棚板と棚板の間にさらに二枚の棚板を付け加えればいいのです。そうすることで、三種類の食器はすぐに取り出せることになるわけです。使いやすく、しかも元どおりに収まるのではありませんか。
 答を聞いてしまったあとでは、いかにも当然のことのように思われるかもしれません。しかし、これもコロンブスの卵の例えのように、そういう発想をすることが大切なのです。たいへん簡単で、しごく当たり前の解決策ですが、片づけることだけに心を奪われていては、絶対に思い至らない方法だといえるでしょう。
 使いやすくすることを考えて、はじめて生まれるアイディアなのです。
 収納に際して、なぜ使いにくいのか、何か原因で使いやすさを妨げているのかを、まず考えることを忘れてはいけません。その原因が、今まで述べてきたように積み重ねられているからなのか、あるいは扉を開けたとき、どこに何かあるかが見えないからなのか、奥行きが深すぎるからなのか等々、自分自身の眼ではっきりと掴むことからはじめなければならないのです。
 それさえ掴んでしまえば、あとはあなたのなかのアイディアを思う存分発揮して、最良の収納法を考え出すだけです。

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