住宅の防災

 住宅内の危険な場所や事故の発生しそうな個所を探し出して、検討を加えてみることにしましょう。ただそれらを全部あげるわけにもいきませんので、建築の構造的なものでの主なものについてのべることにします。
 日本の木造住宅の階段は昔ながらの寸法を踏襲している傾向がありますので、踏画が狭く蹴上げが高い傾斜の急な階段となっています。これは建築基準法にもいささか責任のあることではないかと思われます。
 法規には住宅内の階段は、踏画一五センチ以上、蹴上二三センチ以下となっています。以上および以下となっていてこれが最低の基準ですから、設計によってはもう少しゆとりのあるものができるのですが、階段に占める面積を他にふり向けてしまう関係上、急な階段ができ上ってしまうわけです。
 現状の急な階段の事故防止には、手摺が必要なことはすでにご承知かと思いますが、これから手摺を取付ける場合があれば次のことに注意して下さい。
 手摺の握り棒はあまり太くなく手のひらで握れるくらいにして、取付ける高さも子供のいる時はあまり高い位置でない方がよいでしょう。取付け全物の位置は壁の間柱などを採して、ビスなどで丈夫に縁付けます。

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 階段で危険度の多い所は上りきる二、三段前といわれていますが、しかし感じとしては上りきった所が一番身体の不安定をきたすような気がします。段鼻板(耳板)が傾斜している時はなおさらです。このような理由で階段上部の手摺は、安全上大切なものになります。上りきった二階の廊下に手摺をつけられればよいのですが、部屋の入口などの関係でできない時は、下り口の脇の壁に縦形に取付けるのも一つの方法です。
 階段のすべりどめのために、段板の踏面に溝を一本彫り込んであるのをよく見かけます。普通これでだいたいはよいのですが、なお不安のある時はすべりどめのテープなどを貼りつけますが、これが踏面より突出しすぎると危険です。すべりの方は防止できますが、今度は逆に足を引かけることになります。
 最近ではビルの階段に取付けてあるすべりどめの金物を見ても、踏面の上に直接取付けてありますが、本来は踏面と同じ面になるのが本当です。住宅の階段でも同じことで、薄いテープを選ぶとか、あるいは溝を一、二本彫り込むとか、カーペットを全面に貼るとかして、なるべく出張りの少ない方がよいでしょう。
 二階のベランダの手摺の高さは一一〇センチ以上必要とされています。これは成人の身体の重心より高くするためです。ペランダばかりでなく屋内の二階の手摺にもいえることです。
 特に窓の手摺の高さは小さな子供がいる住宅ではもっとも注意を要することで、窓台に登ってもなお子供の重心以上の高さにあるようにします。しかしながらたいていの場合はそれ以下の低いものが多いので、幼時の内は既存の手摺の上に新たなものを附け足し、成長の後に取外せるようにするのも一つの方法です。
 手摺子というのは縦の禍のことですが、この手摺子と手摺子の間隔は普通一一センチ以下にすべきです。これは幼児の頭の大きさからきています。また、桟は横方向のものは足をかけて手摺に登りやすくなるので危険です。新しい住宅ではだいたい守られているようですが、いま一つ注意したいのは取付け個所の強度です。ビスで取付けてあるにしても、それが一本であったり、取付ける相手が弱い合板だったりすることがあるのでよく確かめて下さい。特に古い建物はその部分で腐っていることがありますから注意が必要です。
台所の釣戸棚や換気フード、洋間の天井の灯具などの取付け不良によっては、それが落下する危険があります。
 台所の釣戸棚はその高さからいってもあまり物を入れる所ではないのですが、下段には皿や食器類をつい一枚また一枚とつみ重ねて、相当な重量になってしまうことがあります。
 釣戸棚本体の構造はともかくとして、建物への取付けは注意を要することです。取付けは普通二ないし四本のビスで壁に固定しますが、取付けの相手である壁の面が薄い合板であったり石膏ボードの面である場合は、ビスを凱じ込んであってもなにもなりません。壁の中の柱や間柱の位置を探し出して、それにビスを取付けてこそ丈夫なのです。これは表面から見ただけではわかりませんから、釣戸棚に手をかけて注意しながら体重で引っぱって見たり揺らしてみて、少しでも懸念があれば補強して下さい。
 補強にはビスを改めて取付けるか、番線やボルトで天井裏の梁等から直接吊るようにします。
 釣戸棚の取付けと同様、天井板や壁の面に直接取付けてある時は注意を要します。重いシャンデリア等は野縁に直接取付けるか、またその野縁を天井裏で補強するようにします。
 シャンデリアの点検は、真下を避けて天井を棹などで突いて揺れ具合を見ます。また換気フードは動力をともなっていますから、つねに揺れやビスの浮きを注意し見守って下さい。
 便所や浴室のドアの開き勝手は内開きでない方がよいでしょう。特に便所はお年寄りが中で事故を起された時に、身体につかえて開かないことがあります。ドアの下に隙を開けておき、万が一の時は下がのぞけるようにしておくのも一つの方法です。浴室も同様のことがいえますが、浴室の戸は木製よりアルミ製の厚いガラス入りのものが、中の様子もだいたいわかり万一の時はガラスを破ることができます。アルミ製の片引戸や折り畳み式のものが出ているので、補修する機会がありましたらぜひ交換したいものです。なお、ドアとはちがいますが、便所や浴室にも手摺や握り棒はほしいものです。
 便所や浴室の錠前は湿気等の関係で故障しがちです。また、質も玄関等に比ベー段落してある場合もありますから、便所に入ったまま錠前が動かなくなって出られないというケースが時に起ってきます。
 台所で調理中に起った時などははなはだ危険なので、少しでも動きが怪しい時はただちに錠前の交換をして下さい。また、万一の時に備えて中にドライバーや目打ちのようなものを用意しておき、錠前を分解できるものは分解します。
 日頃から錠前の機構や扱いの方法などをよく知っておくとよいでしょう。
 台所のガスレンジの後の壁がステンレス張りでも、その下地がなんてあるかを考慮して下さい。ステンレス自体はもちろん不燃材ですが、下地の木材が炭化したりすることがあって危険です。また、レンジに鍋などをかけた時に廻りに拡散する焙によって、近くのものに延焼することがあります。特にガスのゴム管などが焙に当る位置にあると、重大な事故につながるので厳重な注意が必要です。
 盗難の予防も防災の一種であるとすれば、住宅での戸締りについてもぜひ一考を要したいものです。
 鍵は簡単にコピーできる時代です。大切な鍵を不用意に放置しておいて、他人にスペアーキーを作られないよう用心が肝心です。ただいざという時に所在がわからないのでは困りますから、分類して大切に保管して下さい。
 ドアに施錠するということは、たんなる形式的な約束ごとにすぎません。プロの泥棒にとってシリンダー錠をおけることくらい朝飯前のことだそうですし、また円筒錠などを外側から破壊するのも容易なことです。よくいわれる一つの扉に二つの錠前を取付けるということは、ただ心理的な効果は期待できるということです。
 鍵をかけた時、戸の隙間から錠前のラッチが見えることがありますが、これは留守を証明しているようなものです。これをカバーするロックガードの金物を取付けるか、またはラッチの見えない面付錠に替える方法も考えて下さい。
 入口脇の袖壁やドアにガラスがはまっている場合、ガラスを割って手が入り、内側のサムターンやボタンを押して錠を開けられます。その場合錠前は内外ともシリンダー錠で施錠できるものにするか、またはもう一個手の届かない所に補助錠をつけておきます。
 アルミサッシの引違い戸には普通クレセントで戸締りをしますが、ガラスを破られて外さ れますから、もう一個別の金具を取付けて下さい。
 一ケ所の戸締りは補助錠と本錠と計二個ぐらいにしておいて下さい。錠前が多かったり複雑なものをつけますと、災害の時の避難の妨げになることがありますから注意を要します。
 以上のべてきたほかにも、住宅内外の災害につながる原因や個所については枚拳にいとまがないものがあります。

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