環境権の具体的な問題

 公法、私法の相互関係は、住宅環境に関するすべての諸問題に共通しますが、概括的な解説をしておきます。
 日照権 - 日照権については、公害対策基本法の中に規定が欠落しており、それ自体不当だという為力学者の批判も存在しています。しかし、公害対策基本法に規定されていないからといって、日照権が公害問題の重要な一環であるという事実にかわりはありません。とくに、高層マンションその他の建造物が、北側隣接地域の住民の住宅環境を根本的に破壊している事実は、文字通り公害現象そのものだといえます。
 現在では、建築基準法の中に日影規制とよばれる規定が設けられ、それを基に各自治体に条例が制定されている。しかし、これだけでは充分な日照保護をなしえず、新判例の形成が続いている。そこで私法としての民法の原則が登場する。民法上は、主に上記のような所為権以下の諸権利によって日照権を主張することが十分に可能です。この場合には、建築の差止めや改造、あるいは取壊しが中心となりますが、時には損害賠償という金銭的な補償であきらめなければならないこともあり得るでしょう。
 騒音 - 航空機、建築工事、ボイラー、ピアノなど住宅環境を破壊する騒音は多様です。騒音は、公害対策基本法に公害として指定されているほか、騒音規制法があり、また軽犯罪法によって取締りを受けることも可能です。しかし、それら公法のほかに、民法上も、ここに述べた所有権、占有権、借地権、借家権、人格権などにもとづいてその防止を要求することが十分に可能です。
 悪臭 - 悪臭も、公害対策基本法で公害と指定されているほか、それが大気の汚染と結びついているような場合には、大気汚染防止法の規制を受けることがあります。しかし、悪臭についても、日照権や騒音と同様、所有権以下の民法上の諸権利にもとづいて、その差止めを求めたり、損害の賠償を求めたりすることが十分に可能です。
 地盤沈下 - 地盤沈下も、公害対策基本法によって、公害として指宅されています。しかし、これも、日照権等と同様に、所有権以下の権利にもとづいて、地下水の汲上げを禁止または制限するなどの措置を求めることが可能です。
 危険な宅地造成 - 安全性を欠いた危険な宅地造成については、宅地造成等規制法によって禁止されています。これに違反すると、刑罰の制裁を受けます。しかし、このほかに、日照権等と同様に、所有権以下の民法上の権利にもとづき、危険な造成宅地の改造を要求することができます。

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 このように、住宅環境を守る法律は公法および私法の二つの体系にそれぞれ分けることができます。そして、それらの権利がいくら存在するといっても、すべて抽象的な存在では実際上、生活の役にはたちません。現実に、権利侵害が問題となった時点においては、被害者たる私人が活動を開始しなければ、法律の保護が与えられることはあり得ません。棚ぼた式に自己の権利が保障されるわけではないのです。
 しかし、住宅環境の侵害にみられるように巨大なマンション事業者であったり、危険な宅地造成にみられるように、巨大資本を要する不動産会社であったりして、一私人が単に六法全書をふりかざして立ち向っただけでは効果のない場合が少なくありません。もちろん、裁判ともなれば、有能な弁護士をたてることによってある程度権利の実現も可能ではありますが、そのような時間や費用のない一般大衆は、結局被害者仲間をさそいあって、相互に組織を作り、いわば団結を背景として集団交渉によって行政機関や加害者と交渉する方式が、こんにちでは一般化してしまいました。これが、いわゆる住民運動といわれるものです。
 憲法一二条にも、憲法によって保障される国民の権利は、国民みずからの「不断の努力」によって保持しなければならないと規定されています。いわば住民運動は憲法の要求する不断の努力の一つの現象であるということができるであろう。しかし、このような住民運動には、はじめから一つの限界があると考えなければなりません。たとえば、なかには、一部の住民が、加害者から金銭を受領し、運動から脱落してゆくという現象も散見されます。したがって住民運動で目的を達しようとする場合には、よき法律顧問を擁していなければりません。

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住宅環境/ 環境権の具体的な問題/ 眺望権を侵害されたときの対抗法/ ごみ処理場の建設に反対できるか/ 工場の騒音で夜も眠れないときの対抗法/ 養豚の悪臭やハエの発生がひどいとき/

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